第66話 覗き魔法

 放課後のマッサージ屋に誰か入って来た。

 客と思わしき人は白衣を着た女の子だった。


「ヒロさん、あなたを物づくりクラブの勧誘にきました。今ならプロダクションへの紹介状を書けます」


 何だ勧誘か。

 そして続いてナース服みたいなのを着た女の子が入って来る。


「救護クラブに入って下さい。こっちはトリートメントの紹介状です」


 そして。


「瞑想至高クラブだ。俺の所へ入れ。インフィニティの幹部に会わせてやれるぜ」

「狩猟討伐クラブさ。一緒にハンティングしよう。マージンの狩猟チームに入れてあげられるよ」


「お前ら客でないなら出てげ」

「マッサージして下さい」


 物づくりクラブの女の子がウィンクして、そう言った。


「アイナ、出番だぞ」

「そんな」


 物づくりクラブの女の子はがっかりとした様子。

 色仕掛けなんかには乗らないさ。

 エッチまでオッケーというのなら別だが。


「勧誘なんかしても無理だぞ。どこにも入らん」

「ヒロ、どこかに入ってあげなさいよ。別に活動しなくちゃならないって訳でもないでしょ」

「駄目だ。こいつら揃いも揃って魔法の派閥の下部組織だ。俺はエロ魔法道を貫く。どこの下にも入らん。そうだクラブを作ろう。前に考えたシャワールームもクラブなら許可が出る」


 勧誘を追い出して、クラブ作りを始めた。

 アイナとモーラは誘うよな。

 後はトニアとロイドか。

 たしか5人いればクラブとして認められるはず。

 顧問は誰に頼もう。

 トニアは百合の花園をクラブとして承認してもらったよな。

 顧問は誰だろう。

 その人ならエッチも許してくれそうだ。


 トニアを探した。

 トニアは百合の花園の活動をしている最中だった。

 といってもエッチな活動ではない。

 狩猟のミーティングだ。


 顧問はなんとリリー先生だった。


「トニア、リリー先生がよく顧問になってくれたな」

「先生はよく理解されてますよ。なんでも女子校だったとか。こういのはありがちなんだとか」

「そうなんだ」


「先生、マッサージクラブを立ち上げたいのですが、顧問になってくれますか」

「活動内容を聞いてみない事には何とも言えませんね」

「活動はマッサージ及びエステです」


「エステは良いですね。先生もやって貰いたいぐらいです」

「じゃ顧問になってくれますか」

「いいでしょう」


「やった」


 そして、クラブの届けを出してシャワールームを作る工事を始めた。

 金貨50枚ほど掛かったが、こんなのは、はした金だ。

 メンバーを集めた。


「第1回のミーティングを始める」

「わたくしは忙しいので活動は出来ませんわ」


 とモーラ。


「師匠、私もです。百合の花園が忙しくって」


 トニアも追随した。


「幽霊部員でも別にいいよ。残ったのはアイナとロイドだな」


「私は今までと同じで良いのよね。女性の応対という事で」

「僕は女性をマッサージしたいな」

「ロイド、あきらめろ。だが、マッサージを学ぶと、ストリップバーの楽屋とかで、もてるぞ」

「ほんとう?」

「ああ、野郎で経験を積めよ」

「やるよ。マッサージマスターになる」

「じゃ、第1回はこんなところで」


 ロイドだけに残ってもらって密談を始めた。


「今回の工事で、部屋とシャワールームを、男性用と女性用に分ける訳だが。覗き穴を作ろうと思う」

「同志ヒロよ。その言葉を待っていた」

「だが、アイナは妙に勘が良い。普通の偽装ではまず無理だ」


「なるほどね。何か案があると見た」

「グラスファイバーという物がある。屈折率の違う物で細く糸みたいな物を作ると、曲がりくねっていても覗ける」

「それを魔法で再現するとなると氷魔法と水晶魔法が必要だね」

「それも一本じゃ駄目だ。何百と束ねないと」


「じゃ特訓だ」

「特訓は厳しいぞ」

「覗きの為なら平気さ」


「心配はもう一つある。俺は執行猶予がついている。ばれるとちょっとな」

「同志ヒロよ。心配いらないさ。罪は僕が被ろう」


 特訓はストリップバーで行われた。


氷の針アイスニードル水晶の針クリスタルニードル

「うん、アイスニードルをクリスタルニードルが貫いてグラスファイバーになっている」


「細長くするのは簡単だけど、曲がりくねらせるのは大変だね」

「頑張るんだ。ストリップが待っているぞ。エロパワーで集中だ」


 魔法がある程度形になり、ファイバースコープ魔法から、ストリッパーの局部がアップで見える。

 なんで覗きって興奮するんだろうな。

 店の中に入って堂々とガン見するよりエロい。

 ロイドも催したのだろう。

 魔法を中断して何度もトイレに駆け込んだ。


 マッサージ屋の工事が終わる頃にはロイドの特訓も終わった。

 新装開店の店に女生徒が来る。


「ロイド、準備はいいか。やれ」


 ロイドは頷くと魔法を行使した。

 ファイバースコープを覗くとシャワー室の中が映った。

 アイナに案内されて、女生徒がシャワールームに入った。

 アイナは何を思ったかタオルを掛けてのぞき穴をふさいだ。


 ちくしょう、アイナの勘の良さを舐めてた。

 アイナが男性用の部屋に入って来た。


「ヒロ、覗いたでしょ」

「なんの事かな」

「次にやったら、証拠を押さえてお仕置きよ」


 アイナが出て行く。


「同志ヒロよ。僕は諦めない。お仕置きなんて怖くない」

「仕方ないな。捕まったら、擁護してやる」


 ロイドが覗いたが、アイナは来ない。

 何でだ。

 もしかしてアイナの勘の良さは俺だけに発生するのか。

 愛ゆえにって事だな。


「ロイド、覗きもほどほどにな。被害者会にでも嗅ぎつけられたら大変だぞ」

「分かっているよ。でも辞められないんだ」


 こいつ、いつかエロで身を滅ぼすな。

 そうに違いない。

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