第34話 ただれた関係

「私を好きにしていいですわ。その代わり約束は守って下さいまし」

「早速ありがとうございます。では、手と舌と鼻のフルコースから」


 快楽結界を発動。


「あーん、そこは汚いですわ」


※済まない、ここから先は自主規制なんだな。


「なんかマンネリだな。次からは何か考えないと」

「もう、鼻があんなにいやらしいとは、思いもよりませんでしたわ」

「そうだ、次は刷毛車なんて良いな」


 想像したのかモーラは真っ赤になった。


「もう好きにして下さいまし」

「お願いは何? 言ってみてよ」


「リノアという女生徒が呪いに侵されています。彼女を救ってほしいのですわ」

「何だそんな事か」


 俺は呪いに掛けられたというリノアに会った。

 彼女の顔面はただれている。


「魔力感知でいま見るよ」


 堅いな。

 この呪いは堅い。

 堅いだけじゃなくて現在進行形で強化されている。

 こいつは骨だ。

 治せなくはないけど、治す端から呪いを掛けられたんじゃ、元のもくあみだ。


「それでどうなんですの」

「治せるが、根本的にやらないと」


「やっぱり治らないのね」


 リノアは号泣した。

 女の子に涙は要らない。

 要るとすればうれし涙だけだ。


「ちょっと出て来る」

「ぐすん。やっぱり、逃げるんだわ。治らないのね」

「そうじゃない。元を絶ちに行くのさ」


 俺は呪いの元を辿って学園を出た。

 呪いの元は安宿に伸びていた。


 隠蔽魔法、思考加速、お触り魔法を発動して突入する。

 部屋の中は呪いだらけだった。

 そして部屋の中央に老人が居る。


「誰か知らんが、罠を食らうが良い」


 いや、食らわんよ。

 秘孔魔法・霧散拳。

 呪いの罠は全て霧散した。


「何っ、返しただと。ぐはぁ」


 老人は血を全身から噴き出した。

 俺は振動付きそよ風のナイフで中にいた老人にサクッと止めをさした。


 現在進行形での呪いの強化は止まったので、学園に帰る。


「呪いの元は絶った。治療に掛かる。秘孔魔法・解除拳、秘孔魔法・解除拳、……秘孔魔法・解除拳。しつこい汚れもすっきりとな。ついでにエステ」

「顔がぽかぽかする。鏡を」

「ここにありますわ」


「ぐすん。治ってる。絶対に治らないって、言われていたのに」

「呪いを強化していた呪術師らしき奴は倒した。それとは別に呪いを掛けた奴がいるはずだ。今頃は呪いの返しで酷い目に遭ってるはずだ。いっちょ見物に行くか」


「私に呪いを掛けていたのは分かっています。たぶん継母でしょう」

「なるほどね。お家騒動か」

「結末を見届けないといけませんね」

「ご一緒しますわ」


 俺達はリノアの継母が住んでいる屋敷に向かった。

 家に入ると錯乱した声が聞こえた。


「何で私がこんな目に。くそう、あいつが。あいつが」

「私が何ですか」

「やめて見ないで」


 継母は全身がただれていた。


「そうよ。呪いを返した凄腕の解呪師がいるんでしょ。紹介して。お願い」

「嫌よ。お断り」


「そうだな。俺もお断りだ」

「じゃあ、殺してあげる。侵入者よ! 排除しなさい! 殺しても構わないわ」


 男達がなだれ込んで来た。

 護衛か私兵のようだ。


風の刃エアカッター

石弾ストーンブリット

石の針ストーンニードル


「お嬢さん方、俺の後ろへ。秘孔魔法・霧散拳」


 まったく、屋敷内で魔法をぶっ放すなよ。


「こいつ、消去魔法の使い手だぞ」

「くそっ、敵わない」

「なにをぐずぐずしてるのよ。早く始末なさい」


「秘孔魔法・金縛り拳。そして、秘孔魔法・滅魔点穴」

「体が動かない」

「声が……」

「……」


 これで良いだろう。

 継母にはこれだな。

 秘孔魔法・石化拳。


「手が石に……」


 継母は石化した。


「おやっ、継母が呪い返しにあったようだ。石化してしまった」

「私の代わりにありがと」

「いや呪い返しの仕業だから」


「一件落着ですわ」

「ありがとね。ちゅ」


 リノアにほっぺたへ軽くキスされてしまった。


「わたくしの婚約者に手を出さないで下さいませ」

「ごめんね」

「今回かぎりですわ」


「お礼はどうしたらいいですか」

「えっと、エッチで……」


 モーラに嫌というほど脇腹をつねられた。


「ごほん、お礼は既にモーラから貰っている」

「ああ、あれがありました。あなたの罪を五割ほど許します」


「リノアは俺の被害者じゃないよな」

「被害者会の会長とは友達なのよ。私の頼みなら聞いてくると思うわ」


「そのお礼を有難く頂いておくよ」


 次はアイナにお願いされたいな。

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