12/23

10:00

音己ねぇ、ひぃ兄で元気になれたかなー…。


私は英語の授業前に席を移り、窓辺から校庭を見下ろしながら音己ねぇのことを考えているとペンケースの中でペンがまとまる音が聞こえて焦る。


「飛行機、みっけたー。」


天「やめて!」


私が手で壁を作っても取り巻きがその手を叩き落とし、換気のために開けていた半開きの窓から夏來は私のペンケースを投げ落とした。


夏來「天使の飛行機、デブすぎて飛ばないじゃん。まあ、天使には羽もついてないけどね。」


そんなつまんないことを言って私から離れた夏來についていくように取り巻きと杏はついていく。


天「…糞が糞繋げてなにが楽しいんだよ。」


私は椅子をわざと引きずらせながら愚痴をポツリと呟くと、1番後ろにいた杏が私の口元を見ていた。


天「…なに。」


友達でも、親友でも、幼馴染だとも思わなくなった杏に私はトゲのある言い方で突き放すと、杏は気まずそうになにも言わず夏來たちについてった。


…本当、みんな変わっちゃったな。


私は自分の荷物を全てスクールバッグに入れて落ちたと思われる校庭の水道付近を探してみると、入っていた全てのペンが飛び出している状態で落ちていた。


天「はあ…。だるい…。」


誰にも言えない愚痴を自分自身の耳に伝えながら30本近くあるペンを拾っていると、チャイムが鳴ってしまった。


天「まーた遅刻だよ。もう先生に愚痴ろうかな。」


私は全てのペンを拾い終え、教室に戻ると英語の先生がちょうど出席を取り終えたところだった。


「Oh…、日向さん。Englishの時間はよく遅刻しちゃうわね。」


と、英語交じりに話しかけてくる先生にも私は少し腹が立つ。


天「…すみません。トイレ行ってました。」


「なに?生理?」


その男子のつまらない冗談に教室中のみんなが笑う。


それにイラついた私はその男子と隣の席にいる夏來の机前をわざと通り、スクールバッグを乱暴にぶつけてわざと教科書とペンケースを落とし、八つ当たりをする。


これが今の私が出来るギリギリの仕返しだけれど、これ以上やったら先生たちから見て私がいじめをやっているように捉えられてしまうので何も出来ない。


「じゃあ、今日は2人組になってFavoriteなものを文字に起こしてIntroductionしましょー。」


と、英語の先生は何事もなかったように作り笑顔のまま、今日の授業を始めた。


私はいつも前も隣も後ろも斜めの人に声をかけてもらえないし、かけても無視されるので、1人で文章を作っていると先生が私の隣に来てしゃがんだ。


「Ms.日向…?あちらに3人グループがあるからそこに入りません?」


そう言って先生が差したのは杏と取り巻きが集まったグループだった。


天「…いいです。こういうグールプワーク好きじゃないので。」


「あら…。でも、成績に響くわよ…?」


と、私が素直に応じないことに先生はあろう事か成績で脅してきた。


天「私はいつもちゃんとプリントも提出物も黒板に出された問題も率先してやっています。たった1回のこの行動だけで成績を落とすなら親に訴えます。」


「…そう。じゃあプリントだけやってて。」


日本人の意識を取り戻した先生は冷めた顔をして教壇に戻ると、私がいないもののように2人組のグループに音読をさせ始めた。


どいつもこいつも、強いものに巻かれやがって本当イラつく。


私はイラつきをプリントにぶつけるように、高校で習う英文や英単語をみっちみちに書き殴ってその授業の時間を潰した。



環流 虹向/天使とおこた

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