20:00
さすがに大晦日の当日に泊まれるホテルなんかなくて、私は渋々音己を実家に泊めることにした。
そんな中、両親は私が友達と一緒に帰ってきたことを大喜びして年末の年越し蕎麦を食べれないくらいのご馳走を振る舞い音己を迎え入れてくれる。
音己「美味しい…っ。雅紀のお母さん、料理上手で羨ましい。」
と、音己は雅妃お姉ちゃんが大好きだったチキン南蛮を頬張り、ほっぺたがとろけ落ちそうな顔をする。
雅紀「…音己に雅紀って呼ばれるの新鮮。」
音己「ご両親の前ではあだ名で呼ぶのちょっと抵抗あるし。」
そう言って音己は隣の台所でまだ料理を振る舞おうとしている私の両親を見て、少し申し訳なさそうに笑う。
雅紀「さきと雅紀。どっちがしっくりくる?」
音己「んー…、ここにいる時は雅紀かな。」
雅紀「実家だから?」
音己「それもあるけど、雅紀の写真がいっぱいあるから。」
と、音己は私ではない雅妃お姉ちゃんの写真を見て私が親と仲がいいと勘違いしている様子。
まあ、喧嘩をしてるってわけじゃないけど、私は自分のことを息子として扱われてきた期間が少ないから自分の親という意識が薄れてしまったのかもしれない。
音己「雅紀はお家のご飯で1番何が好きなの?」
雅紀「んー…、かかのは焼きそばでととだと目玉焼きかな。」
音己「…今日はないね。」
雅紀「まあ…、お蕎麦あるし、目玉焼きは朝ごはんかな。」
音己は私の好きなものが並んでると思っていたらしく、テーブルを埋めるほどご馳走が並んでるのに1つも私のために作られてはいないことにうっすらと気づいた。
音己「雅紀のジンジャーハイ飲みたくなってきた。」
雅紀「え?いいけど、お店とはウイスキー違うから味変わっちゃうよ?」
音己「…じゃあいらない。」
雅紀「そっか…。でもこの日本酒は美味しいから飲んでみて。」
私は気分がすぐに顔に出てしまう音己に少しでも嫌な気持ちを忘れてもらおうと、お酒を飲ませていると音己はお腹も肝臓もキャパを超えてしまったらしく眠りながらデザートのイチゴを口に運ぶ。
雅紀「音己、喉詰まっちゃうよ。」
音己「…食べたい。」
どんだけ食に貪欲なんだと思っていると、かかがお風呂から帰ってきてまだ音己がご飯を食べていたことに驚いた。
かか「…細いのによく食べるのね。」
雅紀「私もこんなに食べると思わなかった。」
かか「けど、もう眠そうね。お蕎麦はさすがにいらない?」
雅紀「私はいいかな。音己はもう寝ちゃいそうだから多分食べれない。」
かか「分かった。じゃあお布団敷いてくるわね。」
雅紀「うん。ありがとう。」
私はちょっと小さくなったかかの背中を見送って、まだイチゴを口に入れようとする音己の手を止めているとととが冷蔵庫で冷やしていたイチゴを新しく出した。
とと「夜食。部屋に持ってっとく。」
そう言ってととは新しいグラスとお茶と焼酎を持って、私と音己の夜会をかかと準備しに行った。
それが雅妃お姉ちゃんが友達を呼んで騒いでいたお泊りパーティーの時みたいで懐かしいなと思っていると、とととかかが準備が出来たと私に伝えてくれたのでお礼を言って意識が半分飛んでいる音己を連れてお日様の匂いがする敷布団に音己を寝かせる。
音己「…いい匂い。」
と、音己は枕に顔を埋め大きく深呼吸し始める。
だいぶ酔いが回っていつもの音己じゃないなと少し面白がっていると、急に音己が私の手を引いて布団に引きずり込んだ。
音己「したい…。」
雅紀「え?」
音己「さわって。」
と、音己は火照った手で私の手を取ると、自分の秘部に沿わせる。
音己「はじめて…、あげる。」
雅紀「ち、ちょっと待って。」
私の上に覆いかぶさり、服を脱がそうとしてくる音己に必死で抵抗していると急に音己は私の胸に顔を置いて動きを止めた。
雅紀「…音己?」
私は急に動かなくなった音己が死んだんじゃないかと思い、ゆっくりと布団に仰向けにして寝かせるとただ眠気の限界を超えて夢の中に入ってしまっただけだった。
…危なかった。
意外と力強くて男の力がある私でもいい勝負だった。
私は今後、音己を酔わせないようにしようと決めて少し早めに大晦日の夜を終えた。
環流 虹向/ここのサキには
ここのサキには 環流 虹向 @arasujigram
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ここのサキにはの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます