12/27
10:00
昨日よりもよく寝れた夜はやっぱり一がいてくれたからで、やっぱり今日もお別れの言葉なんか言う気持ちにはなれない。
だから一の服を借りて、ベランダでわざとらしくその服と一緒に自分の服も干していると起きたての一が温かい指先で私のニット下にある体をまさぐり始めた。
雅紀「ちょっと…。外に見える。」
一「見せつけてんの。もしかしたら俺みたいにあそこで見てるかもしれないよ。」
と言って、私が一と無理矢理会わなかった時期にマンション下から一が私を呼んだ場所を指すとそこに人影が見えて私は思わず目を逸らす。
雅紀「…い、いるかも。」
一「え?」
雅紀「昨日の人…。一が私と一緒に流れ星見たとこ。」
私がそう言うと一は私の肩に顎を置き、その場所を堂々と見た。
一「いるね。だいぶ執念深いわ。」
雅紀「…どうしよう。何かいい対策ある?」
一「俺は瑠愛くん家にしばらくいさせてもらったけど、姐さんは電車乗りたくないもんね。」
雅紀「けど、そんなこと言ってられないよね…。」
私は電車系の乗り物全般酔ってしまうので、徒歩圏内かバスやタクシーの車移動が主流だけれどストーカーがいるこの状況でそんな甘ったれたことを言ってられない。
一「んー…、じゃあ音己ねぇのとこに避難しよ。」
雅紀「え?」
一「俺もピンチだった時、あそこの家でしばらく過ごしてたんだ。だから大丈夫。」
雅紀「音己は嫌かも…。」
一「音己ねぇは暇してるから逆に嬉しいと思うよ。年末年始は姐さんこっちいる?」
雅紀「今年は実家の予定だけど、分からない。」
一「あれ?行くんだ?」
と、一は私がいつもお墓参りだけで実家には行っていないことを知っていたので少し驚いた顔をした。
雅紀「うん。かかとととに呼ばれたから今年くらいは一緒に過ごそうかなって。」
一「へー…、俺も行きたい。」
雅紀「一は音己とか
私が音己や一の友達の名前を出すと一は自分の顔を私の首に埋めた。
一「姐さんを産んでくれた人に会ってみたい。育てた人は会えなかったから会ってみたい。」
そう言って首にキスをした一は私の頬にもキスをした。
一「髪は直しとくし、バスで姐さんとのんびり過ごしたい。」
雅紀「んー…」
一と旅行するのは嬉しいけど、一は私のことをひとりっ子だと思ってるし雅妃お姉ちゃんの存在は知らない。
その状態で私の実家に行ったら一は私が秘密を持っていたこと自体に傷ついちゃうし、私の家族ごっこに巻き込んじゃうからやめておいた方がいいよね…。
雅紀「…ちょっと考えさせて。行くのは31日だからそれまでに連絡する。」
けど、やっぱり頼りになる一がいてほしいと思ってしまった私は答えを保留にさせてもらい、思ってた家デートとは少し違う時間を過ごした。
環流 虹向/ここのサキには
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます