20:00

買い物後に夢衣に連絡をしたけれど、昨日飲みすぎたからなのかすぐに連絡が帰って来ずにこの時間になってしまった。


いつもだったら5分以内で返ってくるんだけどなと思っていると、携帯の通知音が鳴った。


俺はストレッチ中だった体を起こし、すぐに携帯を見てみると夢衣ではなくて七海からだった。


しかも、今日も飲んでるらしくのんびりとTVを見ながらお酒を飲んでる後ろ姿の夢衣が送られてきた。


俺はまたモヤっとした感覚が体の中に走って、ご飯前に終えたランニングにもう1回出ると電話がかかってきた。


来虎「もしもし。」


七海『あ、今暇ー?』


来虎「暇っちゃ暇かな。」


俺は走っていた足をゆっくりと歩きに戻し、七海の暇電に付き合うことにした。


七海『今、スーパーで買い出しに来てるんだけど夢衣ってお菓子で何が好きなの?』


来虎「…なんで?」


七海『夢衣が携帯の充電忘れちゃってたのさっき気づいたみたいでさ、電話出来ないんだよねー。』


…そういうことだったのか。


もしかしたら嫌われたのかと思った。


俺はなぜか七海の教えてくれたことに安心感を覚えて自分が夢衣に嫌われたくないと思う感情があることを知った。


七海『あればなんでも食べるけど、どうせ食べるなら好きなものがいいじゃん?だから来虎が知ってるかなーって思って。』


来虎「甘いもの系かな。チョコパイとか好き。」


七海 『チョコパイねー…。あー、あった。』


と、七海は袋をカゴに入れる音をさせて俺の耳と一緒に買い物を進める。


七海『あとは?これから飯だけど、何がいいと思う?』


来虎「んー…、昨日は何食べた?」


七海『ピザ。1人1枚食っちゃった。』


来虎「じゃあさっぱり系がいいんじゃない?白湯スープとか。」


七海『なるねー。』


俺はなにも決めてなかった七海の買い物に付き合い、10分程暇電をしていると携帯が通知で震えた。


来虎「…あ、ちょっと電話切るね。」


七海『はーい。ありがと。』


俺はすぐに七海との電話を切って、夢衣に電話を繋げる。


夢衣『ごめん…、充電し忘れてた…。』


来虎「大丈夫。二日酔い?」


夢衣『ちょこっとね。けど、今は大丈夫。』


気のせいかな…。


少し夢衣が素っ気ない気がしてならない。


けど、夢衣から電話してくれたしただの思い過ごしかもしれない。


来虎「…今日も七海の家に泊まる?」


夢衣『うん。3日分の服持ってきておいた。』


来虎「そっか。七海のシェイカーどう?」


夢衣『んー…、前よりはいい感じかな。』


こんなことを話したいんじゃない。


けど、なんだか言葉がうまく表せなくて自分の口が自分のじゃない感じがする。


夢衣『来虎はずっとそっちなの?』


来虎「まあ…、そうだね。」


夢衣『じゃあ、同じ除夜の鐘聞こうよ。』


来虎「どうやって…?」


夢衣『TVで流れてるじゃん。あれを一緒に見るの。』


来虎「分かった。じゃあその少し前にまた電話かけるね。」


夢衣『うん!寝てたら叩き起こして!』


そんな約束をするために電話をしたかったわけじゃない。


一度だけ、自分の中でちゃんとデートを意識して夢衣と出かけることを約束したかったのにそれを言葉に出来なくて今日の電話は終わってしまった。


…明日。


明日はちゃんと言おう。


そう決めて、俺は次会える日のためにデートプランを組み立てることにした。



環流 虹向/ココのさきには

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る