20:00
俺は七海と一緒に、天ちゃんと買い物をしている夢衣と合流するために駅前の広場に来た。
七海「ここ初めて来た。」
来虎「ここ、一緒に来たことあるぞ?ここの広場、ずっと工事してたとこだろ。」
七海「あー…!万年工事してたとこか!4年以上かけてこれかー。」
と、七海は辺りのなんの変哲も無いタイル張りとベンチがある広場を見渡し、ちょっとしたイルミネーションに呆れる。
俺も辺りを見渡して夢衣を探すと、ちょうどイルミネーションの木の隣にあるベンチで天ちゃんと焼き芋を食べているのを見つけた。
来虎「あっち。焼き芋食べてる2人。」
俺が夢衣たちを指すと、七海は俺のコートの袖を引っ張り夢衣たちの元へ自分から行った。
夢衣「この人がななみん?」
と、夢衣は俺たちが声をかける前に見つけ、そう聞いてきた。
来虎「そう。栄田 七海。で、こっちのボブが夢衣で芋持ってるのが天ちゃん。」
俺が2人の紹介をすると、七海は一歩2人に近づいた。
七海「初めまして。ななみんです♡」
と、初対面の人には相変わらずぶりっ子押しな七海は、天ちゃんの手元に残っていた焼き芋を断りもなしに食べた。
七海「これは安納芋だね。」
天「いや、紅はるかです。」
七海「んー、バカ舌だから分からない。」
夢衣「ちょっとトイレ。」
と、七海のぶりっ子を無視して夢衣はベンチから立ち上がり、膝に抱えていた荷物を俺に持たせた。
来虎「今から店入るつもりだよ?」
夢衣「我慢できないから駅のトイレ行ってくる!」
そう言って夢衣は少し焦った様子で駅のトイレを借りに行った。
七海「可愛い子だね。来虎との身長差は30㎝くらい?」
来虎「33㎝。ゾロ目。」
七海「天ちゃんは?身長いくつくらい?」
突然天ちゃんに話題を振った七海は天ちゃんを立ち上がらせて、自分の胸に引き寄せて頭の上に顎を置いた。
七海「いい顎置き見つけた!来虎、写真撮って!」
来虎「てんちゃんに失礼だから…。」
七海「えー…、だめ…?」
と、七海が女性を落とす時にする顔を天ちゃんに向けると、天ちゃんは恥ずかしそうに首を横に振った。
七海「いいってー。天ちゃん優しい♡」
俺はダメって言ってる気がしたけどな。
そう思いつつ、七海と天ちゃんのツーショットを撮ると七海は天ちゃんの肩を抱いて自撮りをし始めた。
天「…あ、あの。そんなに撮ってどうするんですか?」
七海「若かりしクリエイターと写真撮って、10年後にみんなに自慢しようかなって。」
来虎「そういうの失礼だから辞めな。ごめんね、天ちゃん。」
さすがに暴走が過ぎる七海を止めようとすると、天ちゃんはまた首を横に振った。
天「有名になれるかどうかも分からないんで…。けど、そういう風に言ってくださるだけで勇気が出ます。」
その言葉に七海は一瞬辛そうな笑顔をして、天ちゃんの頭を撫でるとおでこにキスをした。
天「…ぁ、…えと、え…っんと…」
と、天ちゃんはさっきまで寒さで少しだけ頬が赤かった顔を全て真っ赤にして目が泳ぐ。
七海「可愛い♡天ちゃんって恋愛未経験?」
来虎「もうそこら辺でやめろ。天ちゃんが困ってる。」
七海「女の子が困ってる顔って1番可愛いと思わない?」
…ったく。
まだ酒が残ってるのか?
俺は強制的に七海と天ちゃんを引き離し、駅でトイレを使えなくてダッシュで戻ってきた夢衣と一緒にすぐ近くのハンバーガー屋に入り、食事をすることにした。
天「うわぁ…、こんな大きいハンバーガー初めて食べます…!」
七海「俺もここ初めて来たから分けっ子しようよ。」
天「いいですね!私このハラペーコバーガーにします!」
七海「ちょっ…、はらぺぇこじゃないっ。」
と、七海が珍しく声を出さずにツボった姿を見て、天ちゃんが指していたバーガーの名前を見てみる。
七海「はら…っぁ、ぺー…にょ…っ。」
来虎「ハラペーニョバーガーだね。」
天「…えっ。」
夢衣「しかも辛いやつだね。天ちゃんって辛いの好きだっけ?」
天「にが…、て…。」
天ちゃんはまた顔を赤くして今度はメニュー表で顔を隠した。
七海「やばいっ。天ちゃん、マジで俺のツボ。」
夢衣「可愛いよね。この素のままの天ちゃんが1番らびゅ♡」
七海「俺もらびゅ♡辛いの苦手ならチーズソースのやつにしよ。」
天「…は、はい。」
七海「俺も選ぶからメニュー見せて。」
と、七海が無理矢理天ちゃんの顔からメニューを剥がし、まだ真っ赤な顔に笑う。
それに俺が呆れていると、夢衣が俺の服をテーブル下で引っ張った。
夢衣「私たちも分けっ子しよ。」
来虎「うん。夢衣が食べてみたいの選んでいいよ。」
俺は昼間より元気な七海の笑顔が見れてホッとし、心が休まるみんなとゆったりと夜飯を食べた。
環流 虹向/ココのさきには
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