第58話 付録:美岬の素材ノート①生き物編


・赤貝


《美岬のコメント》

 砂の中にいる2枚貝で刺身が絶品っす。ヘモグロビンが含まれている体液は真っ赤でまるで血っすね。ガクさんがナイフで捌いてる時に手が真っ赤になってたんで、手を切っちゃったのかと焦ったっす。砂浜の岩場に近いあたりによくいるイメージっすね。




・アサリ


《美岬のコメント》

 砂の中、それもかなり浅い表層に埋まってる潮干狩りでお馴染みの2枚貝っす。砂を噛んでるので食べる前に砂抜きが必要っすね。




・岩牡蠣


《美岬のコメント》

 夏に美味しい牡蠣っす。真牡蠣は夏は身が痩せてて美味しくないっすけど、岩牡蠣は夏でも痩せないので美味しく食べれるっす。本当は岩牡蠣も冬の方が美味しくなるんすけど、冬の真牡蠣がさらに美味しくなっちゃうんで、相対的に冬は見劣りしちゃうんすよね。

 殻が大きいんで、食べ終わった殻をあたしたちはお皿として使ってるっす。



・カサガイ


《美岬のコメント》

 岩場によく引っ付いてる笠みたいな形の殻の一応巻き貝の仲間っす。頭と内臓を取り除いた腹足部分が食べれるっす。火を通すとカチコチに堅くなるっすけど、刺身だとコリコリした歯応えが堪らないっす。



・カサゴ


《美岬のコメント》

 テトラや岩場に住み着いている根魚で、関東ではカサゴ、関西ではガシラ、九州ではアラカブと呼ばれてるっす。頭でっかちで身は少ないっすけど、煮たらめちゃくちゃ美味しい出汁が出るので煮物が最高っす。ガクさんが作ってくれたスープカレー美味しかったなぁ。



・カメノテ


《美岬のコメント》

 亀の手みたいな形で岩場に群生している生き物で一応甲殻類らしいっす。茹でるとめっちゃ美味しい出汁が出るんすけど、あたしの死んだばあちゃんの家の出汁がどうやらカメノテだったらしいと今になって気づいたっす。

 出汁だけじゃなくて剥いた身も美味しいっすよ。



・ハマグリ


《美岬のコメント》

 厚めで滑らかな殻が特徴の2枚貝で、アサリよりちょっと深い砂の中にいるっすね。とにかく出汁が美味しいので、焼く時は口が開くと同時にひっくり返って出汁が溢れないように先に蝶番を切っておくのがおすすめっす。



・ムール貝/ムラサキイガイ


《美岬のコメント》

 シジミとかドブガイとよく似た色のハートを半分に割ったような形の殻の2枚貝で、|足糸(そくし)と呼ばれる糸状の物を殻から出して岩や岸壁にくっついてるっす。元々は地中海原産っすけど、幼生体が船のバラスト水で運ばれて世界中に棲息域を広げたっす。水をろ過して浄化する能力がある有益な生物でもあるっす。汚い海に棲む個体は毒を蓄積していて味も悪いっすけど、綺麗な水に棲む個体はめっちゃ美味しいっすよ。




・ヨコワ


《美岬のコメント》

 クロマグロの幼魚で、胴体に黒い輪をいくつも嵌めたような縞模様があるのが特徴っす。身には脂はあんまり乗ってないんでアッサリした感じは鰹に似てるっす。


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