第17話

「マヒロ...。真島マヒロ...」


ぼそぼそと、高い声を押し殺してるように

見えた。


「え、あの、ブタ...!?」


こっからは。


マヒロのかつてのあだ名を

平気で言う奴等が何人もいて。


幼馴染で、俺の、一日も付き合ってないけど、

彼女のマヒロを悪く言われた気がして、

俺は思わず立ち上がり、叫んだ。


「やめろよ、おまえら、人の外見を罵るような、そんな昔のあだ名を出すのは...!」


「ちゃんと名前があんだよ...!マヒロにはさ!!」


「その言葉言われて、マヒロがどんだけ

傷つくか、想像したことあんのかよ...!!」


俺は。


昔はただの勉強だけが取り柄の、

弱っちい立場の人間だった。


でもな。


今は。


一応、医者で。


その肩書きで、擦り寄ってくる奴等がいて。


俺が何か言えば。


重みを持って、彼女をブタ、だと

平気で罵ってきたヤツらの心に届いたみたいだった。


場内は鎮まりかえり。


その後は、誰も彼女のことを

ブタ、なんて言わなかった。


最も。


藤島くんという、俺からしたらもう、顔だけいい男だけは、依然として、

「ブタが来たよ...」


と小声で呟いていた。


藤島くんと書いてバカ、と読む。

そこまでは俺、口には出さまいと思ったけどな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る