けむりの家
三毛猫
プロローグ 祖母
「幸助、本当にいいのか」
「いいよ、その方が楽だから」
父は彼がひとりになるのを心配していた。家には祖母のほかに誰もいなくな った。母と兄がいたが、家を出て行ってしまって、もういない。
「じゃあ、行ってくるから――」
父も、簡単にこう言って出て行った。
彼は〝ああ〟と言っただけだった。 この時の彼には、毎日の生活の
彼は家に残った。祖母と二人きりの生活だった。 祖母は彼の帰りを待つ人だった。
彼は大学に通っていた。帰りが遅くなるのは当然のようによくあることであった。けれども祖母は夜遅くなって、どこの家も
「さき、寝て良いからね」
「そう――?」
彼がそう話しても、翌日はまたおなじように彼を待っていた。 祖母はいつも彼に笑顔をみせて話した。その顔は
彼はしばらくして、はやく家に帰るようにした。どこかでまた彼は、しがらみからぬけ出せなくなっていた。家族というしがらみに
彼ははやく家に帰るようにしてから、友人とのつきあいを減らした。それは、彼自身の生活と友人たちとの
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