第63話 蘇生

 黒焦げた鱗がどんどん剥がれ落ちていく。

 中からは真っ白な新しい鱗が現れた。

 そして、再び赤い目に光が宿った。

 片目を失い独眼となっても、恐ろしい瞳。


 白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスは再び、息を吹き返したのだ。


「全員、無理な戦闘は避けろ! 一旦、退却するぞ!」

 しかし、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスはすぐさま近くの騎士に襲い掛かった。


「退却だ―――‼」

「早く、逃げろ――――――‼」

 次々に騎士たちは長い尾に薙ぎ払われていった。

「わぁああああああああああああ―――‼」

 地面に叩き付けられて、皆、その場で気絶した。


 ヤバい……逃げなきゃ……。

 その光景を目の当たりにし、レイナは急いで遠ざかろうと走り出した。

 しかし、走って逃げても白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスはすぐにでも追いつかれてしまう距離。


「レイナ、乗って!」

 駆け寄ってきたガモリから手を伸びる。

 ガモリに乗っていたのはジュエルだった。


「ジュエル、ありがとう!」

 握った手を引き上げ、レイナをガモリに乗せ、再び走り出す。

「さぁ、遠くに逃げるよ!」

 急いでガモリで遠ざかるが――。

「ジュエル、ダメ‼ 後ろから追ってくるよ!」

 すでに二人は白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの次の標的となっていた。


「ここは任せろ!」

 反対側から声がする。

「隊長⁉」

「アーリカさん⁉」

 アーリカはガモリを走らせ、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの長い胴に槍を突き刺した。


「たぁああああああああああああああ――――――――‼」


 ――オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛

 強固な鱗に槍が突き刺さる。


「やっぱりな! 脱皮したばかりで鱗はまだ硬くない!」

 アーリカは槍を抜き、再び槍を突き刺そうとした時、

「危ない! アーリカさん逃げて!」 

白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスはアーリカに目掛けて、大きな口で食らい付いた。

「……なにっ⁉」

 気付いた時には既に目の前にまで大きな口が迫っており、アーリカは大きな口に飲み込まれる。


「隊長―――――――――――――‼」

「アーリカさん―――――――――‼」


「たぁあああああああああ―――――――‼」

 危機一髪、襲い掛かる大きな牙を槍で塞ぎ、飲み込まれずにいたアーリカ。


「……くっ……なんて強いパワーだ!」

 押し潰そうとする牙を力ずくで受け止める。


 ――ジュュ――――――


「………くっ………」

 白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの唾液がアーリカに向けて落ちる。

 強烈な臭いと強い酸。

 唾液を塞いだ手のガントレットは溶けていく。


「………くそっ…………」

 徐々に白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの口は塞がろうとしていた。

「このままじゃ、隊長が……」


 ――ビュ―――――――――ン

 白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスに向けて一本の矢が飛んだ。

 レイナの射った矢。


 レイナの矢は綺麗な曲線を描き、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの顔を目掛けて飛んでいく。

 そして、赤く光る目を貫いた。


 ――オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ 


「ナイスだよ、レイナ!」

 白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスが痛み苦しむ隙に、アーリカはなんとか脱出した。


「助かったぞ、レイナ‼」

 アーリカは離れた場所で白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスを振り返る。

 両目を失った白銀鱗の大蛇竜ハクジュオス

 その場で藻掻き苦しむ。


「これで奴も我々の場所は分からないはず! 全員で奴を今度こそ仕留めるぞ!」

 アーリカは残った騎士を集め、体制を立て直す。

 暴れる白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスを囲むように騎士が並ぶ。

 全員、武器を構え、突撃の準備をしていた。


「全員、攻撃しろ―――!」

 アーリカの合図で全員、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスへ向かう。

 そして、各々の武器で反撃を図った。

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