第51話 手掛かり

 次の日。


 ――コン、コン、コン

 何かが窓を叩く音に俺が目を覚ました。

「朝早くから何……? 窓の外……?」

 俺は窓を開けた。

 すると、そこにいたのは一羽の鳥。

 黄色い丸い体のまるでヒヨコ……?


 ――ピヨ、ピヨ、ピヨ


「どうしたの、ヒヨコさん?」


 ――ピヨ、ピヨ、エン、レイナ、キテ、ワカッタ


「わぁーしゃべったー! レイナ~、アヤメ~、ちょっと来て~!」

 俺は慌てて二人を呼ぶ。



「あー、これはピヨヨだね!」

「ピヨヨ?」

 俺とレイナは口をそろえてそう聞き返した。

「うん、こっちで誰かにメッセージを伝えたいときに飛ばすんだよ!」

「メッセージ? でも、一体、誰から?」

「ピヨちゃん、もう一回メッセージを伝えて!」


 ――ピヨ、ピヨ、エン、レイナ、キテ、ワカッタ、モトノセカイ、テンモンダイ、キテ


「天文台……⁉ あの、おばあさんからだ!」

「そうみたいだね! もう、帰っていいよ! ありがとう!」

 そう言って、アヤメはピヨヨを窓の外へと放つと、上手に飛び上がり、飛び去っていった。

「見た目はヒヨコなのに、空を飛べるんだね!」

「ヒヨコ……? ピヨヨだって?」

 そうでしたね……。

「それより早く、支度して、天文台へ行こうよ」

「そうだね!」



      * * *



 再び、天文台のおばあさんの元を訪ねた。

「皆さん、待っていましたよ! 昨日あれから、いろいろと調べまして、分かったことがありまして……」

「本当ですか⁉」

「まず、この世界を救った伝説の勇者はみなさんはご存知でしょうか?」

「はい!」

「では、噂によると、彼も異世界からの転生者であることは知っていましたか?」

「それも知っています!」

「そうでしたか……。でも、その勇者が戦争後に姿を消したのは、もしかしたら元の世界へ戻ったからと言うのは知ってましたでしょうか?」

「やっぱり、そうだったんですね⁉」

「でも、なんでそれが分かるのですか⁉」

「これです!」

 おばあさんはかなりボロボロになった手紙を差し出した。

「手紙……?」

「はい、これは五十年前、私の元に届いた私の友人のエリナーゼからの手紙です! 昨日、この手紙の事を思い出して、家の隅々を探して、やっと見つけ出しました」

「五十年前⁉ そんな手紙をわざわざありがとうございます。で、この手紙とその勇者は何の関係があるのですか?」

「エリナーゼと勇者は恋人同士だったのです! そして、戦争後に姿を消したのは勇者だけではなく、実はエリナーゼもなんです。で、これは私の元にエリナーゼから届いた最後の手紙になります」

「その最後の手紙には何が書かれていたんですか?」

「エリナーゼはとても遠い国に行くため、もしかすると私ともう二度と会えないと書かれていました……。とても遠い国……手紙にはそうとしか書かれていませんが、もしかするとこれはあなたたちの言う元の世界ではないでしょうか?」

「そうかもしれないですね! で、手紙にはどうやって行くのかは書かれていますか?」

「ごめんなさい……。何度も読み返したのですが、そこまでは書かれていませんでした。でも、手紙にはエリナーゼは砂の大陸ドライランドにある世界樹ユグドラシルへ向かっている途中と書かれてあります。もしかすると、砂の大陸ドライランド、いや、天空なる世界樹スカイユグドラシルに次のヒントがあるのかもしれませんね!」

「ありがとうございます! その手がかりがあるだけでも十分です!」

「じゃあ、私たちは、次は砂の大陸ドライランド天空なる世界樹スカイユグドラシルを目指せばいいのね!」

「そうだな!」

 探していた元の世界へ戻る方法の唯一の手がかりが見つかった。

 目指す先に、答えがあるかどうかは分からないが、そこへ行ってみるしかない。


「おばあさん、本当にありがとうございました! 私たちはこれで!」

「ちょっと、お待ちを。皆さん良かったら、これを持って行ってください!」

 渡されたのはペンダントになった小瓶。中に何か入っていた。

「これは……?」

「これは大地なる世界樹アースユグドラシルの木の実のお守りです」

「お守り⁉ ありがとうございます!」

「この地域にはこれをペンダントとして持っていれば、冒険者を守ってくれるという言い伝えがあります」

「本当ですか、それはありがたいです!」

「かつて、私はエリナーゼにもこのお守りを渡しました。こうやってまた誰かにこのお守りを渡す時が来るなんて……」

「きっと、エリナリーゼさんもどこかで無事にいると思います!」

「そうだといいんですがね。エンさん、レイナさんも無事に元の世界に戻れるようにこの地でお祈りしています!」

「ありがとうございます! 何から何までお世話になりました!」

「どうかお気を付けて、旅を続けてください!」

「はい!」

 俺たちはおばあさんに見送られながら天文台を出た。



「じゃあ、二人はこれから砂の大陸ドライランドへ行くんだね!」

「うん! アヤメはこの後、どうするの?」

「そうだね、私も途中まではご一緒するよ! まぁ、この木を降りるまでは私が居ないとダメでしょ?」

「ありがとう!」

「よろしくな! アヤメ!」

「うん! 二人とも!」


 次の目的地は砂の大陸ドライランド

 そこには、一体どんな物が、どんな出会いが、どんな冒険が待っているのだろうか。

 

 俺とレイナの冒険はまだまだ続くのであった。


**************************

【いつもお読みいただきありがとうございます!】

大地の大陸編 前編がこれで完結になります。

次話からは後編になります。お楽しみに。


先日、評価☆100を達成いたしました!

皆さま、ありがとうございます!

ぜひ、評価や感想で応援いただけるととても嬉しいです。


これからもよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る