第28話 決闘

 次の朝、俺たちはカイと待ち合わせした街外れの浜辺へと向かった。


「よう! 二人とも!」

 カイとウェンギンは浜辺に乗り上げていた船から出てくる。


「船ってもしかしてこれ……?」

「そうだ! ウェンギン号だ!」

 いやいや、船って言うよりボートだろこれ……。

 ちゃんと、船らしく帆は付いているけど。

 三人で寝泊まりするのがギリギリな小さいサイズの船だ。


「船に乗せる前にだな、お前たちの実力を知っておきたい!」

「実力?」

「これからどんな強敵が待ち構えているか分からないんだ。お互いの実力は知っておくべきだろ?」

「そうだけど……どうすればいいの?」

「そうだな! 俺と決闘でもどうだ?」

「決闘⁉」

「まぁー、俺も紳士だ。レイナちゃんは戦えとは言わない。エン、俺と決闘しろ!」

「決闘ってここで?」

「そうだ!」

「エン、頑張って!」

 俺を明るく励ますレイナ。


「分かったよ! で、そっちの武器は何?」

「俺は、この銃を使う! エンは剣でいいよな?」

「いやいや、銃って剣相手に飛び道具って卑怯じゃないか!」

「つべこべ言わずにやるぞ!」

 ウェンギンが間に立った。浜辺の上で、俺とカイの決闘が始まる。

「ウェン~!」

 ウェンギンの合図に、カイは銃身の長い銃を手にし、俺は剣を構えた。

「行くぜ!」


 ――バン!


 カイはいきなり銃の引き金を引いた。

「わっ~!」


 白い煙と共に銃口から飛び出たのは――。

 水……⁉

 しかし、威力もスピードも強力だ。

 

 ――キーン

 胸元に向け、発射された水弾を剣で防ぐ。

 水弾を防いだ衝撃は強く、後ろへと押されていく。

 水鉄砲にしてはスゲー威力だ。


「ほう、防いだか! やるじゃねーか! けど、まだまだ行くぜ!」


 ――バンバンバンバン 

 カイは水弾を連発した。

 なんとか全てを《焔光の剣》で防ぎ切ったが、どんどんカイから遠くに押し退けられ、距離が開く一方。

 このままじゃ、負けてしまう……。


「仕方ない……。一か八か……」


 ――バンバンバンバン 

 引き金を引く指は止まらない。


「たああああああ――――――!」

 剣を構え、俺は走り出す。飛んでくる水弾を――。


 ――バ―――ン

 剣に炎を宿し、斬り抜いた。


「何……? 炎……⁉」

 次々と被弾する水弾が水蒸気へと変わっていく。

「たああああああああああ―――――――――!」

 そのまま、カイとの間合いを詰めていき、目の前にまで迫った


 ――キ――――ン


 カイが手にしていた銃は空に高く舞い上がり、遠くの砂浜に突き刺さる。

 そして、俺はカイの首元へ剣を突きつけた。


「どうだ、これで終わりだな!」

 勝負がついたと俺は剣をしまう。

「なーに、残念だったな!」

「これ以上、何をやるって言うんだ?」

 片方に手にはいつの間には小さなピストルが……。

「……えっ⁉」


 ――バ――ン


「ああああああああああああ―――――――――!」

 ピストルからの水弾が被弾した衝撃で、俺は高く舞い上がった。

「痛てぇ―――――!」

 当たった箇所は痛むが、幸い無傷。


「残念、俺の勝ちだな!」

「卑怯だぞ! ピストルを隠し持っていたなんて!」

「何を言ってんだ? これが実戦ならお前は油断して死んでいたところだぞ! これからはそんな命取りになる様な油断は禁物だ。いいか、覚えておけよ!」

「グッ…………」

「よし、決闘は終わったところで、みんな出発だ!」

 と言うと、船を水面まで押し出し、船に乗り込んだ。


「帆を上げよ!」

 その合図で、ウェンギンは高く跳び上がると、帆柱をよじ登り、小さな見張り台に立つ。

 そして、船の大きさには似合わない大きな帆を下していく。

 ペンギン海賊のマークが描かれた大きな帆。


「そうだ、エン。お前、決闘に負けたんだから、この船を海まで押し出してくれ!」

「なんで、俺が……」

「ウェン!」

「この船に乗る限り、キャプテンの言う事は絶対だ。守れない奴は降りてもらうぞ、いいな?」

「あいあいさー!」


「じゃあ、押すよ! せーの!」

 水面に浮く船を勢い良く押し出す。

 すると、船は前進した。


「サンキュー! 急がないと置いていくぞ!」

「おい! ちょっと待ってよ!」

 船は見る見るうちに浜辺を離れていく。


「おーいって!」

「ちょっと、カイさん! エンも乗せてあげてよ!」

「しゃーねーな!」

 カイはロープを投げた。

 俺はそれに捕まり、引っ張れてながらもなんとか乗船した。


「おい! 置いていこうとしただろ!」

「おう! 遅い奴は置いていく、それが海賊の決まりだ!」

「なんだ、このやろー!」

「やんのかー!」

「もう二人とも、これから一緒に航海する仲間なんだから仲良くして……」

「しゃーねーな!」

「レイナちゃんがそう言うならー」

「よし、仕切り直して、いざ、宝島目指して、出発!」

「ウェーン!」

「おう!」

「いえーい!」

「ニャー!」

 こうして、三人と一匹と一羽の宝島を探す航海が始まった。

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