第22話 ドラゴンの絵
フレアが持ってきたのは図鑑。
「フレアはこれが読みたいのか? じゃあ、あっちのテーブルの方で読んできな。俺はもう少し見たい本を探してるから」
「ガウ! ガウガウ!」
フレアは入る前に俺が注意したのにも関わらず本を突き出したまま首を横に振って大きな声を出す。
「しーっ! 静かにしなきゃダメって言っただろ?」
「ガウガウ!」
もう1度注意したけどフレアは声をあげる。どうやら持っている本を読んで欲しいようだ。
「ったく、仕方ないなぁ」
フレアが騒ぐからとりあえず探し物は後にしてテーブルの方で持ってきた本を開く。
「ファンタジー図鑑? とりあえず捲っていくけど、フレアは字が読めるのか?」
「ガウー」
首を横に振るフレア。なるほど、字が読めないから俺に読んで欲しくて持ってきたのか。
それにしてもファンタジー図鑑って……またコアな物を持ってきたな……。
順にゆっくりと捲っていってそのページ毎に書かれている物を掻い摘んで読んでいく。
俺が読んでいくのを大人しく聞いて図鑑を見ていたフレアだったが、とあるページを開くと反応してきた。
「次はモンスターだってさ」
「ガウ! ガウガウ!」
「ん? 何だ? 何をそんなに……ドラゴン?」
「ガウ!」
ドラゴンの紹介ページに載っている絵と自身を交互に指さして、まるで自分がそれだと言っているみたいだ。
確かにフレアはドラゴンと言っていたが、この絵や紹介されているドラゴンとは見た目など、色々と違うところが多い。
「これが自分だっていうのか?」
「ガウー。ガウガウガウ」
「さっぱり分からん」
俺が聞くと首を横に振って、また自身とドラゴンの絵を交互に指さしている。
何が言いたいのか皆目見当もつかず、困っていると後ろから声をかけられた。
「すみません。うるさくて他の人の迷惑になっているので出ていって貰えませんか」
声をかけてきたのは図書委員の人。注意されて周りを見ると、俺たちは図書室を利用している人達から睨まれていた。
フレアに静かにしろと言っておいて俺もうるさかったようだ。
フレアの人種の手掛かりになると思って人の進化や歴史を調べたかったが、俺達は図書室を追い出されてしまった。
「あーあ。追い出されちゃったよ」
「ガウゥ……」
「ま、いいや。帰るか」
「ガウ」
やる事がなくなった俺達は家に帰る。途中の電車やバスにフレアはビビり倒して、乗っている間は尻尾をピンッと立てて固まり小刻みに震えていた。
家に帰って晩飯や風呂を済ませて部屋でゴロゴロしているとフレアが部屋にやってきた。
「ガウ」
「風呂上がったのか? っていうか、部屋に入る時はノックくらいしろよ」
「ガウ?」
「まぁいいや。で? 何か用か?」
「ガウガウ!」
フレアはベッドに横たわる俺の手を掴んで引っ張ってくる。
「お、おい。そんなに引っ張ったら落ちるだろ」
「ガウガウ! ガウー」
引っ張りながらフレアはドアの方を指さしている。恐らくフレアは俺を部屋の外に連れ出したいみたいだ。
「わかった。行くから引っ張るなって」
「ガウガウ!」
ベッドから起きて手を引かれるがままについていくと玄関へたどり着く。
「外に何かあるのか?」
「ガウ」
「もう少しで寝る時間だから、あまり遠くには行けないからな」
「ガウガウ」
外に出て手を引くフレアに先導されて行き着いたのはいなり神社の裏山。
そこでフレアは立ち止まって手を離した。
一体、ここに何があるんだろうか。
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