幕間1


……とまあ、これが俺がここに来た時の話だ。どうだ、なかなかヘヴィだっただろ。

これでも大分良くなったんですね、だと?そりゃそうだ、一応今は人間扱いはされるだろ。

まあ、「異世界移民局」の無愛想で事務的な対応にはムッとしただろうがな。奴らの言葉はカタコト、しかも未だに英語だけしか話せねえときた。

ここまで来るには、マジで苦労したんだぜ?まあ、42年も色々やってりゃ、な。……いや、本当に、色々あったぜ……


おっとっと、気が利くねえ。さては、日本じゃ上下関係の厳しいとこに勤めてただろ?マスコミ……いや、これは広告代理店だな。違うか?

ハハハ、やっぱそうだろ。俺の洞察力と観察眼も、まだまだ健在ってとこだな。まあ、あんなとこはとっとと辞めるべきだぜ。って、ここに来た以上はクビになってるな。

……おいおい、泣くなよ。まだまだ向こうに未練はあるんかね。まあ、こっちはスマホどころか電気すらないと、色々不便だからな。そういう利便性を求めるなら、戻るのも悪かねえよ。

ただ、戻ることが幸せとは限らねえよ。ここも大分良くなった。戻るか否か、それはお前が判断することだ。


あ、世界を作り替えることはできたのか、って?……どうだろうな。この国……ロックモル共和国についてだけでも、まだまだってとこだな。

ましてや隣国のテルミナル皇国、モリスデン諸侯国をやだ。俺の生きてるうちは、きっと全部は無理だろ。

ただ、ケネスが俺に託した想いの10分の1ぐらいは、できたんじゃねえかな。いや、そう信じたいぜ。


……昔話の続きを聞かせてくれ、か?いいぜ。まだ夜更けには時間がある。

マリィはどうしたって?……まあ、それもおいおい、な。


とりあえず、ガイラムのとこに連れていかれてからの話だ。……あいつのことは、未だに良く分からねえんだよ。

あいつんとこには、そこそこ長く……2年は確実にいた。それでも、あいつが俺をどうしようと思っていたのかは42年経った今でも分からねえ。


確実に言えることは、あいつがいなければ俺の今はねえってことだ。俺にとっての幸運は、あいつに買われたことにある。それは間違いねえ。

ただ、じゃあガイラムが好きだったかと言われると、な……まあ、それは今から話すかね。



じゃ、昔話の続きだ。



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