第10話 初めてのお茶会
(ドレス良し! 髪型、髪飾り良し! ハンカチ持ったし準備完了や!)
「うふふ、アレクシアお嬢様ったら気合が入ってますね」
「初めてのお茶会ですもの、準備に抜かりは無いわね?」
「勿論です。あぁ、お茶会の参加者でお嬢様が一番可愛らしくて目立つ事間違いないわ、出来る事ならついて行って覗き見したい……」
お茶会が決まってから2週間後、鏡の前でクルクル回りながら服装や髪型をチェックするアレクシアを可愛い仔猫が1人遊びしている姿を見ているかのようにうっとり眺めながらメイド達がヒソヒソと話している。
スキップしたくなるのをグッと我慢して淑やかに玄関ホールへと向かうと、そこにはラビュタン侯爵家の紋章が入った簡易鎧を着たパスカルとクリステルが待っていた。
「まぁ! 凄く可愛い、やっぱりそのドレスとても似合っているわ。ねぇ、パスカル?」
「ハッ、とても良くお似合いです。これは気合を入れて警護せねば悪い虫が寄って来そうですね」
「残念だけれどお茶会の会場には護衛は入れなくてよ? ホホホ」
「ありぇくねえさま、かわいいねー」
親バカ発言を受けてパスカルはキリッとした顔で答える、その横では乳母に抱かれたエミールが目をキラキラさせて褒めてくれた。
「ありがとう、エミール。今日はお留守番頑張ってね」
「やあぁ、えみーるもいく!」
エミールが必死の表情で両手をこちらに伸ばす、可哀想になって近づこうとしたら乳母に止められた。
「お嬢様、エミール様を抱いてはお召し物が乱れてしまいます。大丈夫です、いつも姿が見えなくなったらすぐにケロリとしておりますので。あわよくば連れて行ってもらえると幼児なりに計算している様で
(そういや保育士になった友達が、泣く子供を気にして中々仕事に行こうとせんお母さんがおるとグズる時間が延びるで早よ行って欲しいって言うとったなぁ。
「いつもエミールのお世話をしているだけありますね、頼りになるわ。エミール、いい子にしてたらお土産買って来ますからね」
アレクシアはクリステルに確認を取るように視線を向けると、コクリと頷いて了承してくれた。
「ではエミールのお気に入りのクッキーを買って帰りましょう。エミール、おりこうさんにしていたらマーブルクッキーが食べられますからね」
「やぁだ~、えみーるもいく~!」
現物が無いせいか、それとも言った事を理解していないのかエミールには通じず、結局乳母に促されて逃げるように馬車に乗り込んだ。
馬車の中では今日のお茶会に招待されている人達の特徴と名前をクリステルと一緒に復習していたら、あっと言う間に到着した。
「いらっしゃい、クリステル。お久しぶりね、やっと貴女ご自慢の令嬢に会えると思って楽しみに待っていたのよ」
「ご招待ありがとうヴァレリー、この子が娘のアレクシアよ」
「お初にお目に掛かります、アレクシア・ド・ラビュタンでございます」
パスカルが護衛の控え室に案内されて行き、お茶会会場の庭園に到着するとふくよかな女性が声を掛けてきた。
クリステルに促されて公爵夫人に渾身のカーテシーで挨拶する。
「噂通り本当に可愛らしいわ、初めまして、貴女のお母様の従姉妹で仲良しのヴァレリー・ド・ポリニャックよ」
ポリニャック公爵夫人はクリステルと雰囲気と髪の色がよく似ている、瞳は青だが血縁者と言われてすぐに納得できる程だ。
そしてその横には夫人によく似たオーギュストと同じくらいの男の子と、少し年上に見える将来楽しみなイケメン、そして同い年であろう夫人の小型版のような女の子が居た。
「こっちは子供達よ、挨拶して」
「私はセザール・ド・ポリニャックだ、お前なかなか可愛いな、仲良くしてやっていいぞ」
(やっぱりイケメンの自覚あるタイプは横柄やなぁ、誰が仲良ぅするか!)
アレクシアは内心そんな事を吐き捨てながら、何も言わずにっこりと微笑んだ。
そしてオーギュストよりイケメンで将来楽しみな男の子に視線を移す。
「あ、あの、僕はクリストフで」「わたくしはリリアン・ド・ポリニャックよ! よろしくね、ご挨拶が終わったから行きましょう! お友達を紹介するわ」
クリストフが話してる最中に待ちきれないとばかりにリリアンが名乗ると、手を繋がれ会場でお茶を飲んでいる令嬢達の元へ連れて行かれた。
「ほほほ、ごめんなさいね、リリアンったら落ち着きが足りなくて」
「家ではアレクシアも似たようなものよ、早速仲良くなりそうで良かったわ。セザールとクリスもアレクシアと仲良くしてやってね」
「はい、もちろんです」
「はい……」
クリステルはオーギュストと同じように容姿のせいで、自分に自信の無いクリストフを以前から気にしていた。
この1年程は事あるごとに、アレクシアがオーギュストを褒めるので少し自信を持つようになった息子を思い出し、アレクシアとの出会いでクリストフも前向きになればと少し期待している。
クリステルは随行メイドのエマに持たせていた手土産をポリニャック家のメイドに渡すと、自分達も会場に居る友人の元へ向かう。
アレクシアの方を見ると早速令嬢達に囲まれており、それを遠巻きに眺めている子息達の姿が微笑ましくて目を細めた。
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