クロネコ

短編小説 『月』


とある帝国の皇帝と女の話。






ザッザッと歩く足音が聞こえる。

暗くてその顔は見えない。



男は女の隣に座った。

お互い名前も知らない。



陰月の夜に会う男だ。

ただ最近は戦争が多くなって

この微妙な関係も終わってしまう。



何故かそれが嬉しくもあり

悲しくもある。

女はそう思った。



男は言った。




「月が綺麗ですね」




女は迷うことなく返した。




「月は綺麗だけど遠いですね」




そして暫く沈黙が続いた。



そして言った。






「「明日も月は見えるでしょうか」」





男と女は同時に言った。

そして2人で笑いあった。



それ以降2人は巡り会うことなどなかった。




2人はそれを思い出として

心の中にしまった。








月が綺麗ですね=愛してます



月は綺麗だけど遠いですね=貴方を思ってるけど、届かない



明日も月は見えるでしょうか=明日も貴方に会えるでしょうか?

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クロネコ @kuroneko-omiki

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