第27話(タニア国王)

ーーその頃、リュウとアキは城の探索を続けていた。取り敢えず、展望台を後にして、1階からじっくり見ていく。すれ違う城の人々は皆、二人をスルーする。上手く溶け込めた。すると、通路の奥から昨日の老執事がやって来た。


「お前達、どこの部隊所属だ」

「俺達は勇者のパーティーだよ」

「偽物ではあるまいな? 昨日も変なのが来た」

「見よ、この聖剣エクスカリバーを」


リュウはエクスカリバーを天に掲げる。


「おお! 今度こそ本物の勇者だ。国王の間へご案内致しましょう」

「ああ、頼むよ」

「ではこちらに」


老執事は来た通路を戻って行く。それにリュウとアキが着いていく。リュウはアキに喋らないよう、ひそひそ話で言っておいた。ボロが出たらまた撤退だ。暫く歩き、階段を登ると老執事が立派なドアの前で立ち止まった。


「勇者殿、魔法使い殿。ここが国王の間でございます」


老執事がドアをノックして開けた。


「国王。勇者殿をお連れ致しました」

「入れ」


アナザーシープの国王は子供だった。王座の大きさに不釣り合いな小柄の少女だ。リュウは老執事に聞く。


「国王はどこだ?」

「あの子ですよ」

「ゼニア姫ってのはお母さんかな?」

「いいえ。国王の妹に当たります」

「頭がこんがらがりそうだ」

「それも無理もない。国王は呪いに掛かっているのですから。見た目は10歳ほどですが、実年齢は25歳になります」

「誰が呪ったんだ?」

「勿論、地球人ですよ」


国王がしびれを切らして、リュウ達に話し掛けてきた。


「何をゴニョゴニョ話しておるのだ? 勇者、肩を揉め。魔法使い、ワインを運べ」

「「えー」」

「勇者殿、魔法使い殿。ここは1つ、爺に免じて」


リュウはアキとアイコンタクトをして、国王の言うとおりにする。


「はよせんか」


リュウは国王の肩を揉む。


「凝ってますね~。お疲れですか~?」

「地球人の殲滅に部隊を編成しとってな。お前が先頭に立ち…………」

「どうされました?」

「お前、地球人だろ」

「え?」


リュウはエクスカリバーを抜刀するか躊躇った。


「冗談だよ、ハッハッハ。魔法使い、ワインはまだか」


アキはワインのコルク栓を抜くのに手間取っていた。アキはC型肝炎で酒を飲んだ事がない。当然、ワインの開け方など知らなかった。

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