第22話(後輩の実力)

リュウは携帯電話、財布、キーケースを持って駐車場に行く。GTRを素通りして、アキのインプレッサを見る。白いストライプが入っていた。


「俺だけじゃない」


リュウは次にGTRのタイヤを見る。新品のタイヤが付いていた。


「ラッキー。アナザーシープの侵食も悪くないな…………いかんいかん。奴らは敵だ」


リュウはGTRを運転して途中でガソリンスタンドに寄り、ハイオクを入れて南木曽峠に向かう。


ーーリュウは南木曽峠に着き、左側の駐車場に停める。今日は空いてる。走りに来てるドライバーは5人ほどだ。リュウのGTRに顔見知りの警備員が来た。ウインドウを開ける。


「やあ、常連さん」

「ちわ。何分待ち?」

「開店したばかりだから、すぐ走れるよ」

「じゃあ、早速」


リュウはGTRのウインドウを閉めて、発進させる。タイヤを温めつつ、コースに異常がないか確認していく。そして5連コーナーを過ぎた直線でスピンターンをする。すると、ロングコースを滑っていた他の5台が、GTRの後ろで停まった。信号は青色。追走をするつもりだ。


リュウはハザードを消して、GTRを発進させた。真後ろに着けてるのは、リュウの後輩のアツシだ。アツシはリュウの弟子でもある。マシンはハチロクを駆る。元暴走族のアタマでヤンチャをしていたが、ドリフトと出会い改心した。


「稲葉先輩のGTRだよな? あんなカラーリングだっけ。ナンバープレートは間違いない。恩返しだ!」


GTRは第1コーナーで慣性ドリフトを魅せる。アツシのハチロクはサイドブレーキドリフトで滑っていく。追走しているが、差が開く。軽いハチロクは峠では有利だが、いかんせんハチロクはパワーがない。


「流石、稲葉先輩だぜ。コーナーでも直線でも差が開く。だが、俺だって」


リュウのGTRは次のS字コーナーで繋げる。アツシも見よう見まねでS字コーナーを繋げようとしたが、スピンしてしまった。後続が次々と停車する。


「あちゃー。恩返しはまだまだ先だな」


アツシはハチロクを立て直してグリップで走っていく。その頃、リュウのGTRは山頂に着いてた。


リュウは駐車場に停めて、タバコを一服しようとするが、空だった。アツシのハチロクも山頂に着き、GTRの隣に停めて降りる。


「稲葉先輩、ちわっす」

「タバコない?」

「ラークで良ければありますよ」

「1本ちょうだい」


アツシはポケットからタバコの箱を出して、リュウに渡す。リュウは1本貰うと、アツシにタバコの箱を返した。


「火、着けましょうか?」

「ライターはあるからいいよ」


リュウはタバコに火を着けて肺の奥まで煙を吸い、そして吐き出す。


「うめー。ラークも悪くないな」

「稲葉先輩、どうしたらもっと上手くドリフト出来ますか?」

「サイドを引くな。クラッチを蹴れ」

「怖いっすよ」

「逆にサイドドリのがこえーよ」

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