幼女7人と異世界で無双するはずだったワシ(元79歳オタク)、神の手違いで弱体化されてしまう。じゃが、色んな意味でもう遅い〜ワシも幼女になっとるし何コレ〜
犬鳴つかさ
序章 老人と全知全能ではない神
第1話 老人と全知全能ではない神 前編
老人は、幼女になっていた。
すっかり脱力した体を大柄な二人の男のうちの一人に荒っぽく担がれながら、どこへともわからない場所に連れていかれようとしている。
──どうして、こうなってしまったんじゃ。ワシが望んだ異世界転生は、こんなものではなかったはずなのに──。
20XX年。一人の
男の名は
──がんばったほうだ。
自分に言い聞かせながら、力なく
意外にも唯一生涯続けたのは中学時代から始まった『趣味』だった。昔は「好きな
だが、死ぬ
悔いはない。ライトノベル、マンガ、アニメ、ゲーム、フィギュア、ポスター……数々の生きた証達に囲まれた部屋で拓人は、肺を痛めながら
薄れゆく意識の中、よぎる願いは一つだけ。
そのジャンルを好む者なら、一度は体験したいシチュエーション。もし、第二の生があるのなら──。
「異……せかい……転せ……い、したい……のう」
連堂 拓人、
拓人は気がつくと真っ白な世界にいた。
遠近感も、今が昼か夜かさえわからない。平時であれば気がおかしくなりそうな空間だが、不思議と心は落ち着いていた。
「ここは……」
「やあやあ、ようこそおいでなすったね。連堂 拓人くん。立ったままでの話はなんだから、どうぞ座ってくれ。あぐらをかいてもいいし、なんなら寝そべったっていいんだぜ?」
背後から声がする。振り返った彼は思わず「ほう」とため息を吐いた。
そこにいたのは、
驚くべきは、その少女がイラストやアニメーションの世界から、そのまま出てきたような姿形をしていたことだ。
三次元の女性ではないその人は、不気味の谷を越えて少しの違和感もなく、拓人の目の前に現実のものとして
「驚いたかい? この容姿、声質、口調はキミの好みにピッタリだろう? 僕は
「えっ、ワシの嗜好ですか?」
「そうだよ。もっとあからさまに
その言葉に促されたわけではないが、拓人は少女の様子を観察した。
裾の短いネグリジェ風の服から伸びているのは、ほとんど生脚だ。組まれたそれは長くはないが、同時に太くも細くもない。
目は……とそこで拓人は観察をやめた。見れば見るほど、自分の心を
しかし、嗜好を反映していると言っても幼すぎないだろうか。ワシはロリコンではないんじゃが……と、拓人は少し気分を害した。
「鑑賞タイムはもう終わりかい? つれないねえ。まあ、それなら事務的な話に移ろうか。事務的なの、嫌いじゃないだろ?」
「と、言いますと」
「君は死んだ。まず、そのことから思い出そうか」
その言葉を皮切りに、拓人は自分の死を思い出した。そして自身の置かれた状況を少しずつではあるが理解し始める。
「では、ここは……」
「ここは神の世界だよ。君の目の前にいる僕こそが神だ」
その言葉は違和感なく、拓人の心に
「いちいち驚かれたり、疑われたりしちゃ文字通り『話にならない』からね。『この世界に来た者は精神が落ち着き、かつ僕の言葉を疑わないようになる』と僕が設定して、この世界を作ったのさ」
理屈はよくわからなかったが『世界を作った』という少女の言葉には不思議な説得力がある。拓人はすでに少女のことを神だと信じ始めていた。
「それに、ほうら見てごらん。今のキミの姿を」
そう言って神は、拓人の目の前に一枚の鏡を出現させた。
「お、おお……」
見ると、拓人の姿は高校生ほどに若返っていた。それも実際の高校時代より血色が良く、ルックスも心なしか美化されているような気がした。
「死の直前の年齢だと、
片目をつぶり、片手で謝る神に拓人は
「い、いえいえ、むしろお礼を申し上げたいぐらいです……しかし、神様が全知全能だというお話は本当だったのですな」
「ああ、やめてくれよ。よくある勘違いなんだ、それ」
神は鏡を消してから、
「
眠れる
食欲を必死に抑えているあの娘を幸せにしてあげたり、
今はどこにいるかもわからない
自分を含めた世界全てに怒りを向けるあの人を救ってあげたり、
──とかね。そうやって、ちょっとした危機から世界を救うことは難しい。僕にしてみれば、世界は『石けんの泡』だね。
なるほど、と拓人は
「前置きが長くて申し訳ないね。本題に入ろう。君には3つの選択肢がある。
①天国に昇る。
②天使となって異世界に転生し、生活する。
③地獄に
君の人生はこの
「天国や地獄……そ、そして異世界というものは本当にあるものなのですか」
拓人は素直な疑問をそのまま口にする。異世界、その言葉を神から聞くだけで心が震えた。
「あるある。オススメは
どうやら、この神にはもったいぶって楽しむ
「で、では、②番は」
「ここではないどこか、みんなの
「天使として、というのは?」
「②を選んで異世界に
「それはつまり……」
「話が早いね。転生が決定すれば、お待ちかねの
「ポイント制⁉︎」
「それで購入できるスキルを好きなだけ持っていくといいよ」
この世界は人間を落ち着ける作用がある、と神は言った。それでも、
「ありがとうございます。ワシを生まれ変わらせてくださって」
「よし、②番で決まりだ。……というか気が早いね。生まれ変わるのはこれからだよ」
神は
「さあ、君の第二の生をデザインしよう」
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