第130話「ステファニー様の陰謀①」
遂に死闘といえる戦い、人喰いゴブリンとの攻防は終わった……
そして黒幕である悪魔メフィストフェレスの暗躍はあった。
だが……
ポミエ村はディーノ達の獅子奮迅たる働きによって、村民も恐怖心を克服し、
何とか守り切る事が出来た。
それも、ただ単に生き残っただけではなかった。
後を託し、天へ還った伝説の魔法剣士クロヴィス・アシャールが、
ディーノへ予言した通りとなったのだ。
横死したグラシアン・ブルダリアス侯爵が
至高たる地の魔法により、ゴーレムとして動き出したクロヴィスの石像。
孤軍奮闘ともいえる、その勇戦を目の当たりにして……
村民達は心をひとつにし、前を向いて生きる勇気を与えられた。
たまたまゴブリンの大群を目撃した隣村猟師達の『通報』により……
悪徳領主デスタン伯爵の不当な対応も明らかになった。
そしてこの事件は公になり、王都騎士隊が救援に駆け付けた次第となった。
貴族令嬢のステファニーを交渉窓口として、
王都騎士隊隊長クリストフ・シャレット伯爵との打合せが終わった後……
ディーノ達立ち合いの下、事後処理にあたった。
圧倒的な数のゴブリンどもを少数で倒した……
誰もがディーノ達、特にディーノがどのように戦ったのか知りたがった。
しかしディーノは多くを語らなかった。
具体的な戦闘方法も言わなかった。
ただ魔法と剣技で戦ったとしか告げなかった……
だが、戦場を見た騎士達は、どれだけの修羅場であったか、
誰もがはっきりと認識する事となった。
個体数を数える事さえ出来ない……
粉々にされたゴブリンどもの屍が散乱した楓村周囲の原野と森……
そして本拠地――巣穴となっていたこれまた死骸だらけの旧き迷宮……
これらを巡回する途中、のべ数十頭のゴブリンが生き残っていて、
襲って来たところを全員で掃討したのはご愛敬である。
そんなこんなで、事後処理も終わって日も暮れた……
ディーノとクラン
救援に赴いた騎士隊の精鋭達も、完全に意気投合していた。
平民の冒険者、若輩の女子達の見事な戦いぶり、
そして掴んだ栄えある勝利……
同じ戦う者として、身分性別を超え、騎士達は尊敬の念を持ったのだ。
年頃の美しい乙女達と騎士隊の若きイケメンの精鋭達……
普通ならば恋のひとつも生まれそうである。
だが、全くそうはならなかった。
何故ならば、ロクサーヌ以外はステファニーを始めとして、
皆、ディーノに熱く熱く片思い中である。
村娘のオレリアも加わり、触れなば落ちんという……
ディーノにぞっこんの雰囲気を目の当たりにすれば……
騎士達は「爆発しろ!」と羨むしかない。
一途な恋へまっしぐらな彼女達を口説く者は皆無だった。
ちなみに今回救援に赴いた騎士隊の中には、
ジョルジエットと王都においてたった一回だけデートをした、
アランなるイケメン騎士も居たのだが……
笑顔であっさりと「サヨナラ」を言われたのは自然な流れでもあった。
という事で、その夜……
ディーノ達は騎士隊とともに、ポミエ村へ泊った。
村の雰囲気はディーノ達が来た時とは一変していた。
活気に満ち
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝8時……
ディーノ達は村長のセザール以下、
別れを惜しむ村民達の見送りを受けながら、
ポミエ村を出発し、王都への帰路についた。
ちなみに「必ず約束を果たす! 奥さんになる! 飛竜亭で働く!」
と改めてディーノの『妻就任』を宣言し、
オレリアも、しっかりとステファニー達の馬車へ同乗している。
敢えて述べてはいなかったが……
戦友ケルベロスとオルトロスは騎士隊が到着する前に既に異界へ戻っており、
妖精猫のジャンも黒豹の擬態を解いて元の猫の姿に戻っていた。
ちなみにジャンは、再びステファニーから「いじられない」よう、馬車の屋根に避難している。
それでディーノはといえば……
ポミエ村へ赴いた時は、
クラン
「お前には特別な話がある」と、
いきなりクリストフ・シャレット伯爵から告げられ……
帰路は王都騎士隊隊長専用である彼の馬車に、
ふたりきりで乗る事となったのである。
何だろう?
特別な話って……
ふたりきりというのも気になる……
ディーノは半信半疑でクリストフの馬車へ乗り込んだ。
車内で対面に座ったクリストフは早速話しかけて来た。
意味ありげに、優しい笑みを浮かべている。
「ディーノ、ご苦労様。今回はいろいろな意味で良くやってくれた」
いろいろな意味?
『ポミエ村の救援以外』という意味?
クリストフの
ディーノはとても気になった。
それゆえ、一応、確認する事にしたのである。
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