(二)

 パソコンで作業中、ふと外を見ると、網戸に緑色の何かが張り付いていた。はじめは驚いたが、よく見るとそれは網戸の外側、虫が網戸に足をかけているのだった。葉っぱのような綺麗な緑の体はきっと擬態のためであろう。頭はとがっており、細長い体、足をしている。その細い足を、ゆっくり、ゆっくりと上の網目にかけ、網戸を登っている。動きは遅いが、一歩、一歩と迷いなく上を目指しているようである。ふと、いたずらをしてみたくなった。網戸を軽くつついてみる。その虫は、自分の体長の十数倍の高さを、ポトリと落ちていった。何が起こったのか把握するように数秒動きを止め、また、ゆっくり、ゆっくりと歩き出す。と、その虫はがピョン、と先ほどいたところまで跳ねた。君、そんなに跳べたのか、と驚嘆してみる。、見た目でこそその虫が何なのか分からないほど虫について何も知らない私でも、その行動で見当をつけられた。バッタだ。少し興味が湧いて、作業中のパソコンで新しいタブを一つ開き、「バッタ」と検索してみる。英語なら”grasshopper”、なるほど草のような緑でよく跳ねるわけだ。それにしても、やはり見ていてあまり気分の良いものではない。網戸に止まった虫がまだ奇麗な色の「ショウリョウバッタ」とやらでよかった。

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