あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します
名無し
1.精霊術師、追放される
「なあ、レオン、よく聞け。お前を追放する」
「え、えぇ……?」
S級パーティー【天翔ける翼】の宿舎、リーダーである戦士ファゼルの部屋にて、俺は呼び出されて早々、追放を言い渡されていた。
目眩がする。何故、俺が……? そもそもだ、自分はパーティーメンバーではあるが、実質的には補欠同然だったはずだ。
同行して後衛もやるというのに冒険者の依頼も受けさせてはもらえない、給与も格段に少ない雑用係としてみんなが嫌がることでも率先してやってきたのに。
「納得できないって顔してるから、ファゼルの代わりにこのあたしが教えてあげるわ」
「おう、レミリア、このクソッタレなわからず屋に説明してやってくれ」
ファゼルに促され、彼の恋人の鑑定士レミリアが俺を睨みつけながら指差してきた。
「レオン、あんたねえ……! 精霊術師っていうけど、なんの恩恵もないじゃない!」
「そ、それは……申し訳ないと思ってる。だからこそ、荷物持ちとか索敵とかそういう損な役回りを一生懸命こなしてきたじゃないか。それですらダメなのか……?」
精霊術師というジョブは、転職した時点で既になんらかの精霊と仮契約を済ませている状態とされているので、俺も安心してパーティーを募集した結果、彼らに拾われたのだが、何故か俺はなんの精霊とも仮契約してないと鑑定士のレミリアに断言されてしまったんだ。
実際、仮契約によって得られる精霊の恩恵は現時点で一切見当たらないので彼女が正しいんだろう。
俺は精霊術師というジョブなのに、どうしてどんな精霊とも仮契約すらできないんだという疑問と負い目をずっと抱きながら生きてきた。
だから非公式のパーティーメンバーでもいいから居させてほしいと頭を下げ、死ぬほど努力して索敵とか罠探知とか完璧にこなせるようになったんだ。
そこは腐っても精霊術師ってやつで、精霊が俺を哀れに思って力を貸してくれたことも大きいんだと思う。恩恵というほどじゃないけど。
その結果パーティーは至って順調で、俺が入ったときはみんなFランクの底辺だったのに今ではS級パーティーまで昇格した。もちろん俺の頑張りのおかげ、とまでは言わないが少しは貢献してきたつもりだったのに……。
「あんたの頑張りなんてなんの影響力もないし、無能なんだから雑用係くらいやるのは当然じゃない。リーダーとして奮闘してるファゼルはもちろん、ドルファンの存在に比べたらゴミ同然よ。ねえ、マール?」
「うん。ドルファンさんは最高なのお。それに比べてえ、レオンって最低……」
「フフッ、あまりいじめないでやってくれ。可哀想じゃないか、この惨めなレオン君が……」
黒魔術師の少女マールに抱き付かれてドヤ顔をするこの男は、このパーティーではリーダーの戦士ファゼルに次ぐか、あるいはそれ以上の影響力を誇る白魔術師のドルファンだ。
特に防御系の白魔術が得意らしくて、実際にこのパーティーに同行してるとダメージを受けることがほとんどなかったから腕は確かなんだろう。
冒険者の間じゃ、俺たちは鉄壁パーティーとか呼ばれて噂になってるほどだ。彼らが優秀で俺が無能なのは充分わかったが、それでも雑用係は必要だと思えたし納得できなかった。
「でも、雑用係として――」
「――僕はこの男のアホ面を見ていると気分が悪くなるのだよ。無能だからしょうがないのだろうが、毎日バカみたいに働くところを見るとこっちまで何かしなきゃいけないような気がして窮屈になる。ルーシェ、入りたまえ」
「はーい、ドルファン様っ」
「えっ……」
誰か入ってきたと思ったらメイド服を着た少女で、当然のように俺を素通りしてドルファンに抱き付いた。
「フッ、まあこういうわけだ。彼女はこんな服装ではあるが、一応ジョブは盗賊で索敵等、充分にこなせるのでね、雑用係としてもレオン君は一切必要ない、というわけだよ。ほら、ルーシェもこの惨めなレオン君にさよならを言ってあげなさい」
「さよならです、レオンとかいう哀れな人っ」
「…………」
はあ……なるほど、そういうことか。
「そうか……んじゃ、みんな今までありがとう。さよなら」
俺は急に何もかもどうでもよくなってきて、こっちが言い返すのを期待したのか拍子抜けした様子のやつらを尻目に、足早に部屋を立ち去った。
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