『異世界ギャンブラーの成り上がり』転生時に得た数秒だけ先を見れる「未来予知」スキルで異世界のギャンブルを攻略します!

@okarin777

第1章 出会い編

第1話 世界一

ーーー「WINNER!」


 俺は長谷川京谷はせがわきょうや。カッチリとしたスーツに身を包み、大きな会場に大勢の観客が見ている中ギャンブルをしていた。自分で言うのもなんだが、今世界一になった最強のギャンブラーだ。


 今日はラスベガスでギャンブルの世界大会があり、俺はそこで優勝した。この世ので一番強い男ってことだ。

 

「優勝賞金は何に使われますか?」

 

 俺をステージの目立つところへ誘導し、司会役が満面の笑みでそう俺にマイクを向けて問いかける。正直この言葉も聞き飽きていた。


「そうですね。特に決まってないです」


 俺はぶっきらぼうにいつもこう答える。なぜなら、もう使いきれないほどの大金をギャンブルで手に入れてしまったからだ。最初は嬉々として車を買うだの家を買うだの、ブランド物を買うだの私利私欲の為に使った。


 だが金ってものは使いきれないほど手に入れると欲なんてものは消え失せるもんさ。


 そう思いながら世界一になった余韻に浸ることもなく、そそくさと会場を後にした。



 ▽ ▼ ▽ ▼ ▽


 日は落ちかけ、あたりがオレンジ色に染まってきた。


 夕焼けの中、入り口でカメラやマイクを持ち出待ちしている記者共の目を掻いくぐりながらサッサと裏道へと逃げる。


「口をそろえて同じことを言うインタビューなんてお断りだぜ……」

 

 毎度毎度悩まされるインタビューアーに愚痴をこぼしながら薄暗い裏道を歩いていると、普段は見かけない道を見つけた。


「こんな所に裏道なんてあったっけな……」


 その道を覗くと、奥は暗く先までは見通せなかった。

 しかし好奇心旺盛な俺はこれもまたギャンブルだな……なんてしょうもないことでほくそ笑みながらその道を進んだ。




 いくつ角を曲がっただろう。日も完全に落ち、明かりも少なくなってきた。世界一になった途端にいきなり勝負に負けたのか……? そう思っていると……


 

「ようこそ」



 暗闇の奥から少し高い、人当たりの良いが聞こえた。



「誰だ」


「世界一達成おめでとう。この世のギャンブルはどうだい?」


「見ていたのか。あらかたのギャンブルは楽しんださ。これ以上面白いことは無さそうだがな」


 おおよその年齢は20代後半って感じか。だが何かがおかしい。人間のようで人間でない、何かこう……そうだ。ゴブリンだ。小奇麗なゴブリンのような感じがする。しかし俺は彼が人間なのか本当にゴブリンなのか、断定できずにいた。


 目が暗闇に慣れてきてうっすらと容姿が見えてきた。茶色いローブを頭からかぶり、顔は見えないが手足はかなり細い。ただ男ってことだけは分かる。


「そうかいそうかい。もし君の知らないギャンブルがまだあるとしたら、どうする?」


(なんだその質問は。俺は世界各国を渡り歩いてギャンブルしてきた男だぞ。まだ知らない事があるとしたら、アマゾンの奥深くで民族がやってる訳の分からん賭け事もどきくらいだ)


 質問の意図が読めず、そう脳内で無駄な会話を繰り広げる俺だった。


「いいや、知らないギャンブルはもうないね。俺は20年以上賭け続けてきたんだ。知らないギャンブルがあるなら教えてほしいくらいだ」


 そう。俺は3歳の頃から賭け事をしている。といっても最初は飴玉がどっちの手に入ってるか当てるくらいのかわいいもんだ。当たれば倍になる。それだけのルール。


 幼稚園に上がる頃にはすっかりハマり、賭けをして同じ園児の弁当を根こそぎ奪ったもんだ。



「そうかいそうかい。私が見る限り、お前は地味で同じようなギャンブルしかやってきていないだろう。もっとド派手で命の危険があるような、スリルのあるギャンブルに興味はないかい?」


「ふ~ん、面白そうじゃん。どこにそんなものがあるんだ?」


「ノリがいいねぇ……じゃあ着いてくるといい。面白いことが体験できるかもしれないよ……」



 そう言い残すと、ゴブリンのような男はこちらに背を向けコツコツと、ゆっくり暗闇の奥へと歩き始めた。


(新しいギャンブルか……面白そうな話だ。賭けてみよう)


 俺はそのまま男の後ろを少し距離を保ちつつ黙ってついていった。


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