Episode16 第一回艦鑑式

 翌日の見学会は艦鑑式だったので、ベステリア王国貴族や視察団たちを乗せたイリノイは沖合で停泊していた高雄型重巡洋艦4隻と合流した後に簡易的な観艦式を行った。

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 艦鑑式とは、簡単に言えば海軍の力を知らしめる言わば、海上の軍事パレードである。

 登場する艦艇は今の所、高雄型重巡洋艦4隻と妙高型重巡洋艦4隻、大蛇型迎撃用護衛艦3隻が参加する予定だ。

「艦長、全艦準備完了です」

「よし、全艦。第3戦速、全主砲、順次号砲斉射」

 イリノイを先頭として航行しながらの順次射撃の姿は、男のロマンの象徴だ。

 時折、警笛を鳴らして航行する。

 壮観だ。

「全艦一斉回頭、面舵一杯」

「面舵、一杯!」

 一斉に頭を揃えて回答する様を見た視察団は感嘆の声を上げ、拍手をし始めた。

「艦砲射撃、用意良し!」

「統制射撃、準備完了。誤差なし、全主砲に拡散榴弾装填!」

 一斉に海上の方に向いた主砲塔群を、艦内から見た視察団の中に紛れていた国王は腰が抜けた。これほどの巨砲を製造してさらに船に乗せるとなると莫大な費用を有するからである。

「全艦より電信。主砲塔、準備良し」

「……それでは、お待たせいたしました。ご覧くださいませ、ロックン・ロール!」

「――オール・フォー・ファイア‼」

 ブリッジに居た砲撃手と電信手がほぼ同時に叫ぶと、イリノイの主砲や後続の艦艇も火を噴いた。

 輪陣形を組んでいた艦艇が一斉に砲撃して立派で一糸乱れぬ綺麗なマルを空に煙で描いた。

 夕刻になり、メレダ港に帰って来たイリノイは視察団を港で降ろした後、西之島に帰る準備をし始めた。

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 イリノイ見学会を終えたベステリア王国の視察団は早速、自分達が攻撃した先の軍事力を侮っていたと再認識をした。

 それにより、これまでの世界情勢を十分にひっくり返すほどだという事が分かった。

「孤島のいや、恐怖の孤島から来た方は丁重にもてなそう」

「そうしましょう、アルベリア公」

「貴方も、ナーゲリア宰相。もっとも、誰のせいでこのような事になったのか理解しておくことだがね?」

 満場一致で認可されたこの条件は、後のベタリア国際同盟でも共通化されることになった。

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