第158話 (閑話)昔話と宦官
話は20-30年ほどさかのぼる。
父は涼州で太守を務めたことがあり、辺境の事情に詳しかった。
若いころは文学者として、儒教の経典の注釈の整理などを行った。
彼の論文が大将軍に評価され時の皇帝に献上、
その後、辺境の武官に転じ、羌族や
始めは拠点で硬く守り、その間に調略で味方を増やしたり、敵の連絡拠点を切断するなどして有利になってから戦うため、負けないし必ず勝った。
清廉で実直な人柄であり、物惜しみをしなかったので辺境の異民族で味方をするものが多かった。
ある戦いのあとで羌族が馬と黄金を張奐に贈ったが、張奐は酒を捧げて感謝した上でそのまま羌族にそれを贈り返した。
今まで漢人の武官から賄賂を要求されて苦しんでいた羌族は、張奐の清廉さを讃えた。
武官だけではなく、涼州
しかし、それを喜んだ鮮卑が匈奴と烏桓、羌族などを誘って大連合軍を結成。辺境を荒らし始めた。
朝廷は張奐を
着任を聞いただけで匈奴、烏桓の20万人が降参した。張奐は降伏したもののうち首謀者だけを処刑して残りを許した。
鮮卑は降伏せずに逃げ去った。
そのころ、若手軍人董卓31歳は張奐の部下だった。
董卓は張奐の元で羌族と戦い大いに手柄を立てた。
董卓は涼州の若手軍人の中でも武勇で有名で、怪力無双と左右両側への騎射が得意だった。
流鏑馬で馬に乗ったまま弓を引く真似をすればわかるが、右利きだと騎射は前から左側にしか撃てずに右側が弱点となる。
右に持ち替えて騎射ができる董卓は強い。
董卓は辺境を守り、異民族からも慕われている張奐を尊敬しており、何かと真似をしていた。
異民族には武を示しながらも優しさを見せ、部下に対しては貰った褒美をすべて兵に配るなど気前の良さを見せた。
これらが彼の名声を高め、のちに河東郡太守に任命されることになる。
― ― ― ― ―
さて、張奐である。
そのころ、後漢は若い皇帝が続き、政治の実権をめぐって皇帝の
霊帝が13歳で即位した時、大将軍の
宦官はそれを事前に察知し、勅命を偽造して張奐を呼び出して
張奐は後に宦官に利用されたと気が付いたが、時すでに遅く、宦官が政治を支配して
党錮の禁である。
張奐は宦官から
その後、張奐は濡れ衣を着せられて引退した。
― ― ― ― ―
延々とむかし話をしたが、これらのことを
その当時、
曹節は天寿を全うしたが、宦官はずっと政権を握っている。
そして
「で、外戚の何進が大将軍として私たちを皆殺しにするそうですよ?」
「歴史は繰り返すものですね……なぜ懲りないのでしょうね?」
彼らはさっそく、大将軍を殺すための将軍を呼び寄せることにした。
― ― ― ― ―
「……
「モテモテですな
洛陽に向けて進軍中の董卓と
とある大将軍が反乱を企てているので、すぐに洛陽の防衛任務につくようにと言われたのだ。
とあるもなにも、大将軍の何進を討伐しろということらしい。
しかし、宦官が勘違いしていることがある。
世間的には董卓は宦官派閥なのだが、そもそも尊敬する張奐将軍を使い捨てた宦官を董卓は嫌いなのである。
「
「そうですぞ、
書状を読みながら董卓と牛輔が吐き捨てた。
これだから宦官というものは度し難い。
怒りとともに董卓は張譲の書状を睨みつけた。そこにはこう書いてあった。
「なお、ご協力いただければ董将軍のお孫さんを皇后に立てることをお約束します」
「……」
「……」
「何をしている!急ぎ上洛をするのじゃ!」
董卓は部下の騎兵の進軍を急がせた。
※董青が結婚してしまったため、董白ちゃん12歳を輿入れさせる話が進んでいます(第134話)
皇帝の妻には皇后、貴人、美人、宮人、采女などの位があり、どの位につけるかは美しさだけでなく政治も絡みます。
※(出典)
後漢書 張奐伝
三国志 董卓伝
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