第88話 カエサル
「んーー?C、A、E……」
男装した董卓パパの使者として
宿舎には大勢のお客さんと荷馬、荷ラクダが集まっています。
我々が持ち込んだ大量の絹を見て
彼らも絹を持ち帰れないとせっかくはるばる
なので諦めきれずに武威で足止めされながらも、ジリジリと待っていてくれたわけで、大変助かりました。
自由な旅は
さて、早速ですが絹と彼らの持ってきた金、銀、宝石に翡翠などを検品します。
その金の一部に太ったおじさんの顔が描かれていました。
「えっと、
ローマ皇帝のネロ。ローマを焼いたと言われたり、演劇や音楽に夢中になってオリンピックにも参加したダメ皇帝ですね。金貨ぐらいもう少しイケメンに彫ってあげてもいいと思うんですがデブです。がっしりしたアゴにパンパンに膨れ上がった首筋、容赦なくデブでした。思わず笑ってしまいます。
「……」
「……」
「アノ……ろーま、モジ、ヨメマス?」
いきなり金貨を拾い上げて笑い出した私を見て、公明くんも賈詡さんも
……アルファベット読めたらまずいよね私ぃ?!しかも
え、えっと……
「わ、私についている神様がおしえてくれました!!」
「サスガ!?漢ノヒト、ワカイノニスゴイ!」
とりあえず無事に取引を終え、荷馬に西域からきた金銀宝石に絨毯などを積み込むことができました。さすがに一年近い交易分が溜まっていましたからものすごい金額になりそうです。一番重要な取引品は天山のふもとの
ああ、しかしローマ金貨。このまま持ち帰ったら価値が分からない人たちに鋳つぶされちゃいますね。おデブのネロさん以外にもせっかくいろんな皇帝の顔が彫ってあるのに勿体ないです。この初老の月桂冠かぶったカエサルの金貨とかシブいから欲しいんですけど……ダメですよね。軍資金に戻さないと……。
今回の商売だけは失敗できないんです。だって
一部の商人さんが長安まで連れて行ってくれと言ってましたが、そこは護衛ができないと言って断りました。
だって独占できないじゃないですか。
はやくカタを付けたいのでこれ以上ボロが出る前に長安に戻りましょう……。
「交易って面白いね、見たことないものがたくさん手に入るんだ」
弁くんは初めて見る西域人やいろいろな産物を見てワクワクしています。
そうそう、商売は大事なんですよ。だから農業だけじゃなくて、商工業も差別せずに振興しましょうね……。
あれ?
「ところで、この金貨を包んである布なんでしたっけ?羊毛でも絹でもないですね?」
「ソレハ、
「……種くださいっ!!!」
綿花の種を
なんとか栽培して……下着にしたいです!!
― ― ― ― ―
商売は上手くいったので後は帰るだけとなりました。
最後の気がかり、賈詡さんと面談します。はたして本当に心服してくれているんでしょうか?
賈詡さんをまだ信用していない公明くんに見張ってもらいながら、まずは今回のお礼を言います。
「賈詡、
「ははっ、お嬢様のお役にたてて光栄至極」
賈詡さんが深々とお辞儀をします。
「……この間はお金稼ぎの案を献策してくれてありがとう、でも羌や月氏の信頼を失うような案は困るのです」
前回の羌と月氏を仲たがいさせて両方殺そうって案ですね。ただあれで怨みが残ったら涼州が安定しないわけでそれは困るんです。
「そうですな、手っ取り早い収入をということで考えましたが、信頼が必要であれば違う案をお出ししました。献策というのは主人の求めるものを正確に把握できて初めて正しい献策ができます」
「そこは最初に条件を全部説明すべきでしたね……」
確かにそうですね。私の目標が分からないのに「カネ稼ぎ」とだけ言ったからそういう案がでてきたわけで……。
だから軍師として活躍してもらうには、私の事情や目的もできるだけ話して理解して貰ったほうがいいんでしょうね。
あれ?
「さっき、お嬢様って言いました?なんでわかったんです?!」
「ああ、やはり
こともなげに言う賈詡さん。
「………」
また騙されたーっ?!
※
・現在は中平二年(紀元185年)
・ローマ金貨が洛陽で出土したことがあり、東西交易でのつながりを感じさせます。
・ローマから漢まで交易交易で100年以上かけて流通していたようです。
・ガイウス・ユリウス・カエサル (紀元前100年 - 紀元前44年)
・ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス (紀元 37年 - 68年)
・いーねくーださい
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