第32話 山裾にて
どうも。あるときは
「うおおおおおっ!!」
ガシッ!!バシッ!!
「ホイ、ホイ」
公明少年が
「ほう、なかなかやるやんか」
董卓パパを見習って大絶賛無職中、
しかし、公明くんは汗ダラダラで攻めまくっていますが、李傕さんは涼しい顔でさばいています。
「そうですか?李さんの相手には不足なようですが」
「そらお嬢様、歴戦の李と15,6の少年を比べたらあきまへんわ。瞬殺されないだけその辺の雑魚よりはるかに強い」
ニコニコしながら郭汜さんが説明してくれます。
はぁ、そういうものですか。ただの親孝行な少年だと思ってました。
「公明くんも背丈は一人前に伸びてますけどな。ほら、李とは肉付きが全然違いますわ。これで成長したらええとこ行きますで」
確かに背は高いですが、まだまだ少年らしいしなやかな体つきの公明君に対し、李傕さんは低めの背丈にがっしりと筋肉がついています。
「よし、こちらカラ、いくゾ」
「はいっ!」
ビシッ、バシッ……
李傕さんが一気に攻め込みますと、公明くんは防戦一方になります。
公明くんがなんとか食らいついて鍔迫り合いに持ち込みますが。
「ハアアッ!!!」
パシッ!
「勝負ありやでー」
「はぁ……はぁ……ありがとうございます。
「もっと肉ヲ食ベロ」
「はい!」
李傕さんが言葉少なく指導します。
なんか最近物騒だということで、公明くんが志願してこうやって教えてもらっているのです。
「あー、坊主さぁ。剣がまっすぐなんはええけど、力自慢の李に力で真正面から挑んでたら勝たれへんで?」
「そうですか?」
「おう、李みたいな猪突猛進はな、こう、上手いこと呼吸をずらしたったら隙ができるから楽勝なんや」
「おい、郭、貴様なら俺に勝てルとでも言いタイノカ?」
「ほら、アホやからこういう安い挑発に乗るやろ、そうしたら動きが読みやすくなる」
「アン?」
「なんや?」
李傕さんと郭汜さんがガンを飛ばしあいはじめ、公明くんが冷や汗をかいてあたふたしています。
「べ、勉強になります。ありがとうございます。でも、まずは真っ直ぐ力を付けたいです」
「おお、やっておるな。元気でよろしい」
「おはよう」
董卓パパが
公明くんが背筋を伸ばして元気に答えます。
「はい!稽古をつけていただきました!これから体操をします!」
「若いものはいいな、頑張り給え」
そう答える董卓パパのお腹がぶるんと震えました。
……じーーー。
董卓パパ、牛輔義兄様も、謹慎中で毎日食っちゃ寝してるから太ってますよね??いい機会です。
「では、みんなで体操しましょうかー?」
「む?
「そ、そうだよ、僕たちはもう完璧に鍛え終わってて」
言い訳する二人に私は冷酷に言い放ちました。
「家に閉じこもってるから鈍って太ってます!はい、体操はじめー!!」
……
……
「はぁ、ひぃ……」
「ぐはぁ……」
董卓パパは柔軟と全身体操を一通りやっただけで息が上がってしまっています。
これはまずいですね、毎朝やってもらいますか……。
まぁ、家にいても雑穀ご飯ばかりですから、適度に運動していれば痩せるでしょう。
よし、じゃあ今日も巫女のお仕事です。
「公明くん、そろそろ行きましょう」
「はいっ!」
私は公明くんと、李傕さん郭汜さんからつけてもらった護衛の
- - - - -
「行ったか、しかし疲れたのう。袁老師(袁隗)の秘策も通じなんだし。酒でも飲まねばやっておれぬぞ」
「まさか
「せやけど
「主公、俺、ちょっと行って盗ってクルか?」
「いかんいかん。そこは頭を使うのだ……うむ。そろそろ太守に謹慎の定例報告があるな。よし、太守に酒をださせよう」
「だしますかね?」
「ださせるんじゃ」
董卓は牛輔、李傕、郭汜をつれて、河東郡の新任太守の政庁に押しかけていきました。
- - - - -
河東郡安邑県のお城を離れた山裾。
そこの荒れ地に
城内で集団で煮炊きをしていると目立ってしまい、新しい太守さんもいい気をしていないようです。活動再開にあわせて本部をひっそりと人目のつかないところに移動することにしました。
と言ったら、この土地を発見してくれた公明くんが得意そうでした。
私は、変装用の
「で、
「はい、わかりました!」
「できました!!……潰れました!!」
早いですね!壊すのも早いですね!!?
公明くんと信者さんたちでワイワイ話し合って、粘土を掘ったり、石をくみ上げて見たり、
こうやっていると開拓している感があってとてもワクワクします。ワクワクしますが、手をだそうとすると信者さんたちに怒られるので見ているしかありません。
あ、そこはなんか昔なにかで観ました!こう円弧を描くように積み上げると安定するはずです!
手元で竹簡を積み上げて見本を見せると、みんなであれこれ言いながら
……
……
なんやかんやで日にちは過ぎていきます。
気が付くと十数個の
「うん、これとこれは温度もいい感じじゃないですか?」
「おお!!ではさっそく
しかし、こうして量産できるようになると、別の問題がでてきました。材料です。
匈奴のおじさんと交渉して乳製品の増産をお願いします。
「また来たネ恩人。
そっか、それもそうですね。幸い、山裾の荒れ地とはいえ、あちこち草も生えていますし。教団本部で家畜を飼えばいいんです。
こうして、
……
……
なんやかんやで日にちは過ぎていきます。
「果実ももっと欲しいですね?山奥ではなく、この辺に果実の木があればいいんですが」
「……わかりました!山から掘ってきます!」
「え」
公明くんはそういうとあっという間に信者さんたちを集めて、山奥に攻め込み、果実の木を掘り出してきてしまいます。
教団本部に果樹園が誕生しました。
……
……
なんやかんやで日にちは過ぎていきます。
信者の皆さんが粘土遊びをしています。こねこね。
こねこねとお椀や壺の形にしていきます。
そういえば
「ああ、食器を作るんですか」
「粘土が余ってただから、これをそこで焼くだ」
見ると信者さんが
あれ?
「
「え、あれってお椀を焼いていいだか?」
「食べ物用とは分けてくださいね」
ただの焚火よりも
「巫女さま、できましただ!」
信者さんたちが大喜びで見せてくるお椀はめちゃくちゃ歪みまくってますが、いちおう土器の生産が始まりました。
なんか手や足で回す式のがあるらしいです。私の記憶にあるやつは機械で回してましたが……。
みようみまねで
うんうん、そこそこの出来ですね……これ、売れるんじゃ?
教団本部に土器焼き場が誕生しました。
……
……
なんやかんやで日にちは過ぎていきます。
教団本部にちらほらとあばら家が立ち始めました。
信者の皆さんが畑を売り家を引き払って、こっちに定住することにしたようです。
「もともと畑も小さかっただし、あそこをちまちま耕すよりこっちのほうが稼げるだ」
放牧場の牛羊、鶏なども増え、果樹園の木も何本か枯らしつつも、なんとか定着しています。また
そして、私は地道にそれを帳簿につけています。
「うふふふふふ」
帳簿の数字や家畜の群れを見ると自然に顔がにやけてきます。
数字が増えていく!資産が増えていく!
これは、楽しいですね!!
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