一年遅れの青春、俺も少しは手伝います。
大根の煮物
プロローグというか掴み的なもの
プロローグ
──突然だが人生には『転換点』、というものがある。
分かりやすいようにいくつか例を挙げてみよう。
例えば、大学受験。多くの人達の就職先や年収が大まかに決まるといっても過言じゃないイベント。
例えば、プロポーズ。成功すれば死が二人をわかつまで結婚生活は続く(浮気とか離婚とかそういうのは一旦置いといて)。
大袈裟な例であれば、寝坊したおかげで脱線事故やテロ事件に巻き込まれなかったとか、だったり。
結果的に自分で選んだにしろ、そうでないにしろ、取った行動や選んだ選択肢によってその後の人生が
それが『転換点』
勿論、今挙げた他にも人それぞれ、幸か不幸か別にして人生の転換点というのはあるもので。
それは「平々凡々」というのに相応しい人生を歩んできたこの俺でもそうなのだ。
川原悠馬。十七歳。高校二年生。童貞、彼女無し歴=年齢。身長は平均的、やや痩せ型。
母親と年の離れた二人の弟と共に暮らす、四人家族。少々複雑な家庭事情はありつつも、それ以外は特に不自由無く育つ。恥ずかしながら、中学生の頃に少し反抗期的なものもあったが今は更生しました。
時々母親に代わって小さい弟達の面倒を見てきたお陰か、育児スキルはそこらの新米パパより高い自信がある。まぁそれが生かされる将来は今のところ来なさそうなんだけども。ははは……。
ゴホンッ。スポーツ経験は小学生の頃は野球と水泳、中学では柔道部に所属していた。とまぁ、上辺だけ見れば大層なもんだが、情熱を持って取り組んでいたわけでも、特別な才能があったわけでもない。それどころか中学の頃は自由度が増した分、度々サボっては好きな二次元系関連のイベントやサイン会に行っていた。……全部バレてたけど。ただ、部活自体は嫌いじゃなかったし、なんやかんや楽しかったので最後まで所属しつづけて引退した。振り返ってみて「結構クソじゃない?自分」とは思うけど、今でも連絡を取って遊ぶくらいの仲間を得ることが出来たのだから良しとしよう(自己満足)。
頭の出来はそう悪いわけじゃなく、むしろそこそこ出来るほうでその自負もあったのだが、「せっかく高校行くなら勉強じゃなくて青春じゃね?」的なことを受験1ヶ月前に思い立ち、結果地元で全てが中途半端と称される……
その際、勉強出来るやつと出来ないやつで極端に別れていた中学校だったために、それまで親しく
そして一年経った現在……望んでいた青春とはほど遠いものの、片手で数えられるくらいの友人とその他諸々、そこそこ充実した毎日を過ごすことが出来ている。二年になってクラス替えが行われた現在もちらほらと喋れる人達も増えてきた。
……今、「なんだよ、ボッチじゃねぇのかよ。普通じゃん!」とか思ったヤツ。気持ちは分かる。自分でも振り返ってみて「そんなに悪くないんじゃ……」とか思っちゃったし。でもまぁ色んな意見があろうともこれくらいは許して欲しい。そこそこ充実しているとはいえ毎日毎日、家と学校とバイト先を淡々と行き来する日々。味気の無い日常に数少ない友人達と趣味を語らうくらいは。
ちなみに趣味は読書とアニメ鑑賞。読書のほうはラノベと漫画がほとんどで、ほんのたまに一般文学。これで読書が趣味と言っても良いのか甚だ疑問ではあるが、まぁ一応本を読むのは大好きだ。特に電撃文庫とファンタジア文庫と集英社から出ている作品は全て暗記しているくらいには大好きだ。アニメのほうは割合的には二割もいかないので今回は割愛。
さてと、ここまでで俺、「川原悠馬」という人間の人生の三割は説明し終えたことになる訳だが(自分で言ってて少し悲しくなるが)、少しは分かって貰えただろうか。素晴らしい「平々凡々」っぷりだっただろうと思う。
尖りとがったスポーツの才能も、1000人に1人のイケメンフェイスを持っているわけでもなく、かと言って人を惹きつけるようなカリスマ性や人間力、コミュニケーション力なんかはさらに無い。モブ、パンピー、風景的人間というのが俺にお似合いの言葉なのだ。あ、でも、自分とは真逆の立場にいる人達のことを死んだ魚の目をした某ラノベ主人公みたいに「リア充爆発しろ」とまでは思ってない。あくまでも住んでる世界が違うだけだと思ってる(天竜人的な)。
まぁとは言え、こんな平凡な人間にですら冒頭で言ったように大なり小なり、望むか望むまいかは別として人生の『転換点』と呼ばれる場面は来るもので──
「よろしくね、川原くん」
「んなっ!?」
六月某日の放課後、喧騒混じる横浜駅地下街の本屋【有林堂】のスタッフ休憩室にて。
本日開催するサイン会の
──遅れに遅れた俺の『青春の
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