第3話 ギャップ

 次の日、和馬かずまは早くに学校に着いた。

理由は、夏鈴かりんと話すため。

昨日の夏鈴の言動をみて、小学校の頃のように笑える環境をつくると決心していた。


和馬は、昨日、晴樹はるきに、


「夏鈴さんって早く来ていはるかな?」


とラインしたところ、


「友達と話すからか、結構早くに学校に来ていると聞いた事はあるけど。」


とのことだった。


和馬が教室に着いてから5分後、登校してきた夏鈴が、入ってきた。


「お、おはよう!」


「・・・・」


「おはよう!」


「おはよう(小さい声で)」


「あ〜。よかった!無視されたかと思って、一瞬びっくりした。」


「?。・・・珍しく早いですね。いつも、私が1番に着くので、人いてびっくりしました。」


「いや、まだ1日しか経ってないよ。まぁこんなに早くきたのは、初めてだけどね。」


「・・・。何で私に話しかけてくるんですか?今まで関わった事ないと思いますけど。」


「えっ!?覚えてない?小学校の時の林間学校のバスの中で、一緒にしりとりした和馬やけど。」


「・・・。覚えてないです。小学校の時の話は特に。」


「ああ。そっか。」


「すみません。」


「いや、謝る事ではないから。小学6年の時は、同じクラスでよく話していたけど、それでも分からない?」


「小学校の時の記憶がなくて、分からないです。」


「そういう事かぁ。じゃあ、今日から覚えて!俺、朝陽和馬あさひかずまっていいます。バスケ部所属です。かずや和馬など好きな呼び方で呼んでください。」


「あっ。えっと岩井夏・・・。」


「夏鈴ちゃんやんな!名前覚えているから、無理して自己紹介しなくていいよ〜。同じクラスだし、気軽に話しかけてや。」


「俺、今日からはやく来るし、沢山話そう。」


「あっ・・・。」


『ガラガラガラ』


誰かが入ってきた。


「おー!晴樹おはよう!それで夏鈴ちゃん、これからよろしくな!じゃあねー!」


和馬は、晴樹の席に行き話していた。


(なんで、こんな私に話しかけてくれるんだろ?よく分かんないなぁ。夢かもしれない?)


 ぼーっとしていると、登校してきたクラスの男子の井口惣歟いぐちそうや


「岩石邪魔。通路の真ん中で突っ立っとくな。」


と言った。


(あー。夢だったみたい。)


夏鈴は、席に座って静かにしていた。


(そうだもんね。私岩石だもんね。じっとしておこう。)


惣歟そうやさっき何て言ってた?その言い方良くないで。」


和馬が、さっきのを聞いて注意しに来てくれた。


「和馬には、関係ないから大丈夫。障害物が行く手を阻んでいただけだから。」


「あー。そうか。でも、障害物って呼ぶのは良くないぞ。」


「はいはい。それよりも和馬、この問題答え何になった?」


(あ〜。2人とも友達なんだ。私はただの岩石。

 調子乗ったらダメだ。)

次々と生徒たちが登校してきた。


 そして、朝のホームルームが始まった。


「おはようございます。今日の連絡は、ホワイトボードに書いているので、各自で確認するように。あと、もう少しで高校生活最初の定期テストが、始まるから計画的に勉強して下さい。連絡は以上です。今日もトラブルなく、元気に過ごしましょう。号令お願いします。」


「起立」  


『ガラガラガラ』


「気をつけ」


「礼」


「ありがとうございました」


1時間目が始まるまで、自分の席で勉強していた。


すると、

岩井いわいさん、友達が来ているよ〜」


和馬が、教えてくれた。


「あ。うん。」


夏鈴は席を立ち、ドアの方に向かった。


「鈴羽〜!どうしたの?」


「夏鈴!体操服貸してくれない?忘れちゃって。」


「いいよー、全然貸すよ〜!」


「ありがとう!夏鈴神様」


「神様はやめて〜。」


「えー、じゃあ恩師!」


「いや、恩師もやめて〜。普通でいいよ!」


「普通でいいの〜?面白くないじゃん。」


「いや、ここは面白くなくて良いよ〜。」


「そう?まぁとりあえず、ありがとう!また、洗って返すね〜!」


「全然!体育頑張ってね〜。」


夏鈴は、鈴羽と話が終わり、席に戻った。


 一方の和馬は、その様子をずっと見ていた。


(僕らと鈴羽さんへの接し方が違うな。ギャップが凄い。)


(僕らの前でもあんな感じだったら、今の状況も変わるかもな〜。)


「夏鈴さ〜ん!今日宿題なかったっけ?」


和真は、そう言いながら夏鈴の席の隣に来た。


「あ、、。ないと思います。」


「了解!教えてくれてありがとう!」


(ん?よく考えたら、なんで私に聞いたんだろう?他にも聞く友達いたと思うのに。)


「キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン」


1限目数学Ⅰの授業が始まった。


「プリント配るので、一枚とって後ろに回してください。」


夏鈴は、席が1番後ろなので回ってくるのを待つだけだ。


(あ〜あ。回ってきたけど、プリント破れてるしぐちゃぐちゃ。高校でも続くのか。)


「今から、5分時間とるのでプリントの問題を解いてください。」


5分後、先生が


「5分経ちました。隣の人と交換して答え合わせします。」

 と言った。


夏鈴は、隣の席の惣歟にプリントを渡した。


「1番 y=2(x−4)+5」・・・


答え合わせが終わり、プリントを返して貰った。


すると、プリントにはバツだらけだった。

プリントの右上には0の数字が書かれていた。


(え〜。合っているはずなのに。)


困っている夏鈴の横で


「岩井夏鈴0点だってよ。何にも出来ないんだな。本当に岩石だわ」

と笑いながら言う惣歟。


クラスは、騒がしくなり至るところから笑い声が聞こえる。


すると、惣歟そうや


「岩石、プリント貸して。」と言われた。


直してくれるんだと思った夏鈴は、ためらいもなくプリントを渡した。


「なぁ、見ろよ。本当に0点だろ?」


「うぁ。ガチで0点だ。こんな答案破ってよくね?」


「破っちゃう?」


そう言った惣歟そうやは、夏鈴の答案を破った。


「はい。プリント」


破られたプリントを渡された夏鈴。


(破られた、、、。)


和馬は、夏鈴の方を見たが、この日は目が合うことはなかった。


その1限目から、いじめがエスカレートしていった。



 その日の夕方、夏鈴は母の八千代にいじめの事を話そうとした。


「お母さん。」


「どうしたの?夏鈴。」


「えっと・・・。今日の夜ご飯は何?」


「今日は、ハンバーグよ。」


「分かった。ありがとう。」


お母さんに、心配をかけたくないという思いから、いじめに遭っているという事は言わなかった。


夜、寒気がした為、熱を測ると38.0℃あった。

食欲もなく、ハンバーグは食べることができなかった。


次の日も、微熱があったので学校は休む事に。


 一方で、学校では


「朝陽さ〜ん。」

 と鈴羽が和真を呼んでいた。


「はーい。今すぐ行きまーす。鈴羽さん、どうした?」


「夏鈴は来てないの?体操服返そうと思って来たんだけど、、。」


「熱があるから、休むと言う事なら聞いているけど。」


「誰から聞いた?」


「先生だけど。」


「そうなんだ。今日一緒に、夏鈴の家行かない?私一人だけでは行きにくいから。もちろん、晴樹さんも!」


「あ〜。うん。一緒に行こうか。」


「ありがとう!今日の放課後は急すぎるかな?」


「今日の放課後は、晴樹と一緒に遊ぶ予定だったから丁度いいや。今日行こう。」


「本当にごめんね!晴樹くんにも、よろしくと伝えておいてね!じゃあ、帰り校門前で待ってるから〜。」


「はーい。晴樹に言っとく」


 鈴羽は、自分のクラスに戻っていった。


「晴樹〜!今日の放課後、夏鈴さんち行くって。」


「はぁ。なぜそのようなことに?」


「鈴羽さんが、体操服返しに行くから付いてきてって。あと、プリントも届けないといけないから。」


「あー。了解。俺らだけで行くかと思ってびっくりした。」


「俺らだけでいけるわけがないやんか。家知らんし。」


「まぁ、そうやけどな。」

 

「ていうことでよろしくな!」


「あーい。」


 今まで休む事はなかった夏鈴に、一体何があったのか。

 第4話に続く・・・。







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