バーチャルネットバトラーもゆる! ~炎上女子とバーチャルアイドルのラブコメの行方~
スカイレイク
私は炎上に強い
ふぅ……学校は終わりましたね。
高校から帰宅し、PC、スマホ、タブレットを全部起動させて私はネットの海にダイブする。
「はろー! 陰キャの皆ー! 皆のバーチャルライバーもゆるだよ!」
私はネットでV活をしている。一般的なもので言えば動画配信者でしょう。しかし私はそんな無難なネット活動をしていない。私は
動画サイトは基本で、匿名掲示板から小説投稿サイト、果てはダークウェブにまで私の承認欲求という怪物は手を出した。
そして私は今まで様々なサイトに登場した結果、一つ分かったことがある。
例えば掲示板で野球の話題を出したり、宗教の話題を出して炎上したり、ブログで流行り物に逆張りしたりと様々なことをやってきた。その結果として全てが炎上していた。
私は今日も流れるようにマイクロブログサービスのアカウントを削除する。ほとんど日課になっている、そのためレンタルサーバーと契約して無制限にメールアドレスの削除と発行が可能にしてある。
昨日は時流に乗っている新しいビジネスとやらを『ネズミ講』と断言して信者を怒らせた。もはやすり減るメンタルもないくらいに炎上からのアカウント転生はいつものことだった。
「さて……無難な話題を出しましょうか……そうですね、子ども受けの良い話題をしましょうか……」
一日のネット活動の手始めは匿名掲示板と決めている。ここなら炎上してもIPアドレスが変わってしまえば他人として振る舞える、無制限な転生可能なアカウントのようなものですね。
M:小学生の頃に音楽の教科書の最後のページにプリント貼らされた人おる?
名無しさん:まーた炎上営業か
名無しさん:なんで貼らされたんでしょうなあ(すっとぼけ
名無しさん:同じ学校かな? うちでもやったなあ
そしてやはり今日も炎上したのだった。くっ……子ども受けしやすそうな話題を振っただけじゃないですか!
そして私はスマホの機内モードを使用し、ルータのケーブルを抜き差しして転生をした。この気軽に転生できるところが匿名掲示板の強みです。マイクロブログで炎上すると少し面倒なことになります。そのため無難な話題をここで探るのが日常になっています。
ちなみに私はMという固定ハンドルを使っているが、トリップ機能等を使っていないので結構な人数がMを名乗り炎上芸をするのが日常になっている。そのためどれが本物の書き込みで、どれがなりすましの書き込みなのか分からなくなっていました。そのため私もブラウザの機能でハンドルを自動入力する設定にしている。
こんな事ではくじけません! 私は平和なインターネット生活を送りたいのです!
M:今日はライトノベルを買ったんですよ
名無しさん:ほーん、何買ったん?
M:物○シリーズですね
名無しさん:アレはラノベじゃない
名無しさん:いや、ラノベやろがい!
名無しさん:アレがラノベってウッソだろお前!?
名無しさん:あなたがラノベと思うものがラノベなのです(ry
二つ目の話題でもやはり炎上してしまった。この手の板にはオタクが多いと聞いていたのでフレンドリーな話題を出したつもりだったのですが失敗に終わりました。
しかし、人は何故ライトノベルの定義だけでここまで熱くなれるのでしょう?
名無しさん:相変わらずMは炎上してるな
名無しさん:Mは絶対一人じゃないぞ、Mと自分をMだと思っている異常者の集まりだぞ
名無しさん:おっさんから幼稚園児まで演じてる奴がいる気がする
話は私の正体に向かっていった。しかし幸いにも人種差別等マジでヤバい話題には手を出さないのでそこで本物か偽物か判断されている。そのため燃えても特定に向かったりはしない。
しかしおっさんとは失礼ですね、リアル女子高生を相手におっさん呼ばわりとは……いえ、幼稚園児の可能性もあると書いていますね、これは私が無限の可能性を持っている証拠とも言えるでしょう。
ではもっと無難な話題を……そういえば今日よく分からないことがありましたね、ちょっと聞いてみましょうか。
M:玄関にお洒落なルーマニア国旗を掲げてたら新聞勧誘が逃げていったんですが何故ですかね?
名無しさん:なんでやろなあ?
名無しさん:不思議なことがあるんだぞ
名無しさん:そうかそうか
名無しさん:ナチュラルボーン煽りをする畜生の鑑
やっぱり炎上した。日常の疑問を呈することすら私には許されないらしい。
私はやはり何をやっても炎上するので掲示板を開いていたブラウザを閉じる。私はスマホから賛同の意見を送るような卑怯な真似はしない、私なりのマナーであり信条だったりする。
「さて……今日のアカウントは無事ですかね……」
そうつぶやいてマイクロブログを開く。もちろんフォロワーはゼロだ、アカウントを転生させる度にフォロワーが消えるので私にはフォロワーという概念は存在していなかった。
時々飛んでくるリプライが私のコミュニケーションの全てであり、私からフォローする人も数アカウントの間転生させても同じ人をフォローしないというマイルールを決めている。
今日も気楽に配信者や、ゲーム実況者の投稿を眺める。最近の流行はPCならFPS、スマホならMOBAのようです。
アカウントの名前は『もゆる』このアカウントと同名のアカウントも無数に存在しており私は自分以外と同じように扱われる概念のような存在になっている。
投稿数ゼロ、フォロワー数ゼロ。それが私のデフォルトステータスだ。
私は今日も何気ない日常を綴ってみる。
もゆる:はろー! 今日は学校で倫理の授業があったんですよ、そこでトロッコ問題を先生が教えてくれましてね……
先生が話してくれたトロッコ問題とは、暴走トロッコの進路で切り替えポイントを操作することで善人を一人助けるか、悪人を五人助けられる、どちらを選びますかという問題です。私は大変感銘を受けました。
『本物ならトロッコ問題で五人轢く、そういう奴だぞ』
『本物なら善人の一人を轢くだろ、世界ランクアップを常に狙っていくのがもゆるスタイルだぞ』
『もゆるは悪人五人より世界ランク下位だから間違いなく悪人を轢くぞ』
『せやな、アイツは世界ランク下位の常連やったな』
などなど、私は今日も無事に炎上したのでした。私は私自身と私自身のなりすましによってすっかりゲスキャラと認識されていた。もっとも、原因を作った始まりのアカウントは私だけの力で燃やしたので、なりすましは原初の私に近い存在と言ってもいいでしょう。
私は今日は日が悪いと判断して寝ることにしました。もちろん寝る前にスマホを機内モードにして、ルータを再起動しておくことは忘れません。コレで明日の私は今日の私とは別の私になれます!
私はネットの皆から受け入れられている様子を想像しながら明日の学校のことなどを考えていました。
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