第3話 国立特殊技能訓練校

 病院を出てタクシーで10分行った所に港があり、そこから、学校行きの船に乗った。

 学校は沖の小島を全部敷地にしており、勝手に島を出入りする事はできない。なので、申請を受け、許可が下りると、こうして船が動かされる事になる。

 船に乗って5分ほどで小島に着く。

 島は台地のような形になっており、周囲はフェンスで覆われている。そのフェンスの切れ目に船着き場があり、出入りを監視するためか詰所があり、武器を携帯した自衛官がそこにいた。

 敷島は顔写真入りのIDカードを見せ、悠理に、

「入学証明書は?」

と訊く。

 一緒に転がっていたと言って回収されていた自分のものだと言われたデイバッグを開けると、財布やメモ帳、携帯電話と、封筒が入っていた。

(これかな)

 出して見ると、ここの校名が印刷されている。

 そして中からは、撮った覚えもない自分の顔写真が張りつけられた入学証明書と書かれた紙切れが入っていた。

「はい、いいですよ」

 自衛官に見せるとそう言われ、それを畳んでポケットに入れると、

「ようこそ、特技校へ」

と服部が言い、歩き出す。

 それに続いて、島に入って行く。

 台地の上に続く階段があり、上り切ると、グラウンドだった。その奥に建物が3つあるが、それを見る限り、マンモス校に思える。

 グラウンドのヘリを回るように道があり、右の方から近付いて行く道を歩き出す。

「真ん中が校舎で、右が寮、左が研究棟と自衛官の建物だ。ちょっとした買い物と散髪は、寮の1階がマーケットになっているから、基本、ここで何でも揃う。

 入寮手続きをして、後の事はそこで聞け。

 質問はあるか?」

 質問だらけだが、できない質問だらけでもある。

「いえ。ありません。色々とありがとうございました」

 服部はブラブラという感じで、校舎へと歩いて行った。

 寮の中へ入る。

 玄関は左端に付いており、入るとまずは下足場となっていて、ずらりと靴箱が並んでいた。そしてそこに、連絡を受けて待っていた寮監が立っていた。

「ようこそ。敷島悠理君だね?君は1年出席番号3番だから、ここね」

 端の列の上から3番目の棚に、「敷島」というネームプレートが入っていた。

「靴はここに。中はスリッパで、支給品だから、それね」

 扉を開けると2段になっていて、上の段にピンクのスリッパが入っていた。

「名前を後で書いておいてね。

 校舎の入り口でも履き替えるけど、同じようにロッカーが並んでるから。

 グラウンド用の靴も、ここに入れておいていいよ」

 スリッパに履き替えて靴をロッカーの下段に入れ、寮監について歩き出す。

 右手にドアがある。

「この向こうは売店や散髪屋があるから、暇な時に見に行って。ああ、ここは下靴ね」

「はい」

 そこを過ぎて、段を一段上がる。そこは事務室と書かれたプレートの入った小部屋があり、小さな窓口があった。

 その奥に階段とまだ奥へと続く廊下がある。

「この奥、右手が食堂。朝食は6時から8時まで、昼食は11時半から13時半まで、夕食は18時から20時半まで。好きな時に行って食べて。

 奥は浴場。朝は6時から7時半までシャワーは使えるし、風呂は、17時から23時まで。好きな時にね。

 部屋は402号室、4階の2つ目だね。同室の子は明日来る予定だから、今日は君1人だよ。

 説明書や注意は、部屋に冊子が備え付けてあるから、読んでおいてね。

 何か質問はある?」

「ええっと、あなたはいつもここにいらっしゃるんですか」

 悠理が訊くと、彼はああ、と笑った。

「ボクは辻北。事務室に昼間はいるから、電球が切れたとか困った事があったら言ってね。席を外してる時は、窓口の電話で呼び出して」

「はい。よろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしく」

 辻北はにこにこしながらそう言い、悠理は階段を上がって4階の部屋へ向かった。

 そして思った。

「心肺機能も若返ってるのか。最近は階段で4階なんて疲れて休憩しないと行けなかったけど、上れるな」

 少しだけ嬉しい発見をした悠理だった。

 



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