茜色した思い出へ
おくとりょう
第0話 回るのは夕暮れ
あたしは、つぅーんと人差し指を突っ立てて、ぐぅっと息を圧し殺した。その子を脅かしてしまわぬように。こぼれる笑いを噛みしめる。
その子の目の前に、そぉーっと指を突きつけて、ゆっくり。くるくるくると回し始める。指先だけがぐるぐるぐると。指から下は像のように、じぃーっとじっと動かさない。
素直なその子は指につられて、ぐるぐるぐると。頭もだんだん動き出す。ぐるぐるぐるぐる目が回り、ぐるぐる頭も回った頃にゃあ、丸い頭はぽろっと取れる。秋に木の実が落ちるように。枯れた花が散るように。
そして、身体は飛び立った。
あぁ、可哀想な子。あたしは思わず涙をこぼす。まさか死んでしまうとは。
目尻から垂れたひとしずくは、頬を伝って流れ落ちる。何故か上がった口元へ。
しょっぱい味を舌に覚えたあたしは、頭のないまま飛び立つ身体を見送った。どこまで飛んで行くのだろう。
まるで日暮れの空のように、あたしの心は満たされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます