へや

@DieForChikuwabu

第1話


 

 事故物件に住んでいる。

 畳を敷き詰めた狭すぎる部屋に、布団を一枚引いて、背の低いチェストに収納とテーブルの役を与えて、他には何もない。トイレと風呂は別で、そこだけが唯一の拘りポイントだ。玄関へ踏み込むや否や、友人は顔をしかめた。

「寝る部屋じゃん。」

 そうだよ。それ以外何が要る。私は笑って、友人を寝室兼リビングルームへと促した。彼は座ったりせず、隅に立ったまま狭い部屋を見下ろした。

「事故物件って聞いてたけど、事故物件じゃなくても住みたくない部屋だ。」

 私にとっては事故物件だ何だとかは全く興味がなかった。とにかく家賃が安い、それだけで選んだ部屋である。半ば呆れた表情でこちらを見つめる長身の男は、私が事故物件を借りたと聞いた途端わざわざ隣県から訪ねてきた。名は田所、高校時代からの付き合いだ。だから言ったろ、と口を開きかけた時、突然外が騒がしくなり我々の注意はそちらへ向けられた。

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