ログイン23 再び包む眩い光!
「何で急に池の中に飛び込んでいるのやら・・・」
吐き捨てられる言葉と共に歩み寄ってくる二つの影。彼らから向けられる一瞥の視線は、全身を濡らす水よりも遥かに冷たく感じた。そして、そのまま二人は礼央が、水から上がるのを待つことなく颯爽と右方向に90度身体の軸を移動させると、先ほどよりも歩く速度を上げた。
「おい! ちょっと待ってくれよ!!」
服まで大量に水を含んだ状態では、普段の動きはかなり制限を受ける。大股で水上を移動するも、思ったより前に身体が動いていない。その間にも、礼央と二人とも距離は開くばかりだ。
背中に向かって声をかけてみるも二人は振り向くことはない。もしかして、声が届いていないのか。それは、当然のように有り得る可能性の一つだ。この王国には、礼央の声を掻き消す要素など十二分にある。街の喧騒、それに単純に自分の声が小さかったと言うことも考えられるだろう。
「おーい!! すぐ追いつくから歩くのをやめてくれよ〜!!!」
今度は、先ほどよりも腹に力を入れて声を出した。これで、聞こえないと言うことはないはずだ。
「おいおい。マジで、止まる気配がないじゃないかよ!!」
だが、二人の背中は徐々に豆のような形になっていくばかりで、一向に動きが止まることはなかった。礼央は、この時この国に入って初めて、焦りと言う衝動に全身が襲われた。
この場で二人と逸れてしまっては、大きな何かを手放すことになると、直感が強く告げていたのだ。それが、何なのかは分からない。この王国についての情報なのか、それとも他の王国の話なのか。
拍動を早めた心臓に身体が釣られ、足を動かす筋肉の動きが一段と速くなる。重い錘のように足に纏わり付いていた重量感も、今では嘘のようだ。スイスイと前に出る自分の足を見て、案外自分も単純なんだなと、我ながら呆れてしまう。
「やっと、辿り着いたよ・・・」
池と街道を区切る外濠。その付近まで手が届く位置にたどり着いた時、礼央の口からその言葉が漏れた。すでに、二人の姿は遠い向こうにある。ここから、一秒でもはやく脱出して、走って追いかけなければ本当にこの街の雑踏に紛れて見失ってしまうだろう。
少し前から、チラチラとこちらを伺う街道を歩く人の目線にも、少し痛さを感じてきた頃合いだ。どちらにせよ、この場から早く立ち去りたい気持ちだけが、礼央の頭を支配していた。
「よっし! これで、さっさと——!!??」
礼央が池の外濠に触れた瞬間。誘いの森にあった女神像に触れた時のような強い光が、礼央を襲いかかった。変わらぬ光度。やはり、目を開けていることは叶わない。しかし、それでは以前の経験と何も変化がない。
「今度こそ・・・目を開けて見せる!!!」
意を決して、細く目を開いた。開かれた視界の先には、眩い光による白一色の世界だけが返ってくる。しかし、一つだけ。新たな情報が、視界の左端に表示されていた。文字にすると一行ほどの文字量ではあったが、大きさがいつもの表示とは異なっていた。
「新たなスポットを確認しました。『聖戦の傷跡』」
文字のフォントも、大きさも違う。明らかに、重要なことを伝えている情報を左から右に目を動かして、瞬時に把握する。そして、明るさを増した光に襲われ、再び暗闇の世界に光を閉ざした。
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