チートでおとぎ話を上書きしまくるチー太郎
いずも
第1話 どなたか、チートは要りませんか
昔々、あるところにチートの女神とその息子がいました。
チートのお陰で何不自由なく暮らしていけるため、息子はずっと部屋に引きこもってぐうたらと過ごしておりました。
チートの女神の息子はものぐさ太郎と言われ、いつしかチー太郎と呼ばれるようになりました。
今日もいつものように引きこもって惰眠を貪っていると、部屋の外からすすり泣く声が聞こえてきました。
「おい
チー太郎は女神様はもちろんのこと、誰に対しても横柄でした。
「うう、息子よ。大変です。このままでは女神廃業かもしれません」
「あ?」
女神様の言うことにゃ。
昔は異世界転生が一大ブームとなり、みんなこぞってチートの女神の下に集っていたのですが、ブームも下火になった今となってはチートを授かりにやってくる転生者はめっきり減ってしまいました。
誰もチートを求めてトラックに跳ねられてくれません。
そんな痛い思いをしなくても簡単に異世界に転生できる時代が到来したのです。
「今の時代は玄関開けたら2秒で異世界。転生とか時代遅れだしー」
栄枯盛衰、驕れるものも久しからず。
あれほど賑わっていた女神界隈も今ではこのチートの女神一柱を残して居なくなってしまいました。
チートバブル期の貯蓄でなんとかやっていけていますが、それも限界があります。
神様の原動力はなんと言っても他者からの信仰です。
信仰が集まらなければ女神様とてチート能力を失ってしまいます。
「このままチートの力を失ってしまえば、お前を置いて母は神話の世界に戻らなければいけません。ああ、でもどこかへ行けと言われてしまったのだからこのまま戻ってしまえば良いのでしょうね」
「お待ち下さいお母様。僕がなんとかしてみせましょう」
先程まで
チー太郎はチートの力を失うことを何より恐れていました。
この暮らしを守るためならなんだってやる覚悟でした。
「おお、息子よ。なんと素晴らしい。では、お前にチート能力を授けましょう。チートの素晴らしさを人々に広めて、みんながチートを求めて再びやってくるように布教活動に務めるのです。ポテチを捨てよ、部屋を出ろ、です」
女神様は標語にまぎれてさらっと毒づきました。
「なるほど……しかし具体的には、どうやってチートの素晴らしさを伝えましょうか。ううん」
チー太郎はカニ味噌程度の脳みそで考えました。
「よし、おとぎ話ならたくさんの人が見るはずだ。おとぎ話の中にチートを持ち込んで、その素晴らしさを人々に広めましょうぞ!」
「何でも良いからさっさと行くのです。良いですか、成果が出るまで帰ってくるんじゃありませんよ」
急に冷たくなった女神様にも動じず、チー太郎は出発します。
「では行ってまいります!」
こうしてチー太郎はチートを広めるべく、旅立ちました。
「ふー、やっと行きましたか。いつもこの時間になると飯はまだかとうるさいですからね。たまにはゆっくりドラマを楽しまないと。……キャーッ、格好良いー!」
女神様は最近ネットドラマにハマっていました。
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