君と出逢えて俺は変われた 自分次第でどうとでもなれますっ!

如月 歩

第1話『不幸は突然に』

俺の名前は漆原陽介、何処にでも居る普通の社会人、取り柄もなければ格好良くも無い普通の男だ。

 一般的には仕事帰りに、飲みに行くのが定番だが、俺にはそんな付き合いすらない。

違うな、簡単にいうと酒が飲めないのだ。    会社の上司に無理矢理飲み屋やキャバクラに誘われるが、適当な理由を付けては断っている。

 何故そんな事が出来るかって? パワハラになる為、無理強いする事が出来ないからだ。

 それに俺には、他に酒が飲め無い特別な理由がある…


喧騒入り雑じる中、今日も帰り道を歩く。

 いつもと変わらない道、風景、そして人の波をかきわけ陽介は家に着く。


玄関の鍵穴にキーを差し込んで回す。

「ただいま」 と一言発するが、返事は帰って来ない。

此処に住んで2年目になり、独り暮らしは10年程。

今時珍しく、住んでる所はオートロックでは無い賃貸マンションだ。


 部屋に入ると一気に熱風が襲って来る。

陽当たりが良いが、代わりに夏場は地獄だ。

急いでクーラーを付け、スーツを脱ぎ

ラフな格好になる。

 そして、パソコンを起動しお気に入りの

ワラワラ放送という生配信のサイトを付ける。

 そこでは、色んな男女が配信者と呼ばれ、

様々なジャンルで放送している。


 他には旧作、新作等のアニメも配信していて、各々のユーザーはアカウントと呼ばれる架空名義、所謂ニックネームを、用いて来場者として視聴する事になる、他にはフォロワーと呼ばれるファンが配信者に居る。


陽介はいつもの様に、アニメ作品を探し、

 お目当ての配信が、見付かったのかパソコンのマウスを、クリックして視聴し始める。


「お!クマゼミの病む頃にやってるじゃん、やっぱり夏は定番だな」

『クマゼミの病む頃に』、この作品の内容は、一人の男の子が仲間やヒロインを、助ける為に悪戦苦闘する、よくありがちなタイムリープ作品だ。


 結構グロいシーンがあるが、物語としては

最高に良いし、毎年来場者数もかなり集めている。

陽介が視聴し始めてから、暫くしていると

何やら何処からか物音がする…。

 それは次第に大きくなり、此方に敵意を剥き出しな異音と変わる。


「……いつものやつが来たか、音量だって抑えてるのに奴は地獄耳なのか?」


異音は鳴り止まない、人為的?嫌がらせ?

そのどちらも正解だ。

そう、俗に言う"壁ドン"である。

 壁ドンとは、隣人が隣人に対して五月蝿い と、物や手で壁を叩き威嚇する行為を言う。

それが今まさに起こっている。


「おい!うるせぇぞ、静かにしろや! こっちは気持ちよく呑んでるんだ」


隣人の男は罵詈雑言を、陽介に投げつけながら、壁を叩きさらに威嚇する。

 だが、パソコンから漏れる音量は決して

相手を不快にする音量ではなく、誰もが聴いても常識の範囲内だった。


 なら、イヤホンで聴く等の対策を取れば?と思うだろうが本人曰く、それだと臨場感が無く視聴をしている気がしないとの事らしい。

正直恐怖の何物でもない、この隣人はどんな職業で何歳なのか解らなく、ただゴミ捨ての際に見掛ける程度で、40代位にしか見えなかったという。


 いつも一時間位騒いだら収まるのだが、

どうやら今日は、何やら様子がおかしい。

 時間は夜の22時を周り、隣人の壁ドンや罵詈雑言はエスカレートしていった。


「おい!きいてんのかぁ?いいかげんにしねえと○○すぞ!」


脅しにも似た声を荒げ隣人が暴れている。

明らかにいつもとは違う。

 陽介の心拍数が段々上がり、心臓の音が、

これから起きるであろう惨劇を物語っていた。


 流石に視聴続行は、不可能と思い急いで

パソコンの電源を落とす。

だが、既に遅かった様で玄関の方から異音がした。

 ドンドンドン! ガンガンガンガン!と徐々にその音は大きくなり、玄関が壊れる程の勢いだった。


そう、隣人が怒鳴り込んで来たのだ。

 陽介の緊張は最高潮に達し、命の危険を感じ始めていた。

こういうトラブルは、ニュースでよく観るが、まさか自分の身に降りかかるとは、思いもよらずどうして良いか陽介は、パニックに陥った。


このままでは近所迷惑にもなるし、収まる気配も無い。

 陽介は勇気を振り絞り、異音がする玄関を開けた。

開かれた玄関前には、ガタイの良い男が、

 物凄い形相で立っており、此方を睨み付けている。

すると、男は陽介に近寄り今にも殴りかかる勢いで、詰め寄って来た。


「おめぇよ!いつもうるせぇぞ! なめぇてんのかぁ? あん? ○○されてぇのか!」


男は、陽介の胸ぐらを左手でつかみ罵詈雑言を浴びさせる。

 向こうは体格もデカく、ラグビーでもやっていたかの様な大男で、掴まれた腕によって、

 息が徐々に苦しくなり、意識が遠退いて行きそうになった。

思考能力が追い付かなく、打開策も見当たらない。

明らかに謝って済む状況を遥かに越えていた。

 男のボルテージはMAXを向かえ、陽介を殴る為の右拳を構えている。


もう駄目だ… と陽介が諦めかけた瞬間


周りの住人が、騒ぎを感じ取り次々部屋から出て来ては、慌てふためいている、辺りは大騒ぎになっていた……。


 流石に男もこの状況を目撃される訳にはいかないので、自分の部屋へ急いで戻る。


 間一髪のところを脱した陽介は、急いで玄関の鍵をかけ、部屋の一番片隅にうずくまり体を小さくしながら安堵した。


「はぁはぁはぁ、ヤバかった… 本当に殴られるかと思った…」 


陽介は胸を撫で下ろした。


騒動から一時間、荒かった息も大分落ち着き、台所に行きコップに水を注ぎ、一気に喉に流し込み渇きを潤した。


「まるで砂漠でオアシスを求め、さ迷いやっと見つけたみたいな感覚だ…」


陽介はコップを片手に持ちながら、呆然としていた。


 時計は深夜0時を周っていた。


色々あったが、体より精神の方が疲れていた。


「…マジヤバかった、もうこんな時間だし寝るか、寝られるか?明日は会議だし無理にでも寝よう」


そう小声で言うと陽介は布団を敷いて、深い眠りにつくのだった…。


═════════════════


陽当たりが良い部屋なので、朝陽の光に照らされ寝返りを打つ、右へ左へと体を傾けながら、陽介は寝相が悪い。

 いつもの様に目覚まし時計のアラームが部屋中に鳴り響く。


時計は朝7時を周っていた。


目覚まし時計を止めようと、手探りで探したが感触が無い。

 昨夜の騒動で、いつもの位置と若干ずれていたのだった。

陽介は寝ぼけながら、ようやく目覚まし時計を見つけアラームを止める。

 何故目覚まし時計の位置が、若干ずれていたのか?

と疑問に思った瞬間、ようやく思考が追い付いた、思い出したのだ昨夜の事を。


「まずい!アラームの音大きかったよな、『隣の奴』に丸聞こえだよな!……なんて事をしたんだ俺は…」


全身に悪寒が走った。

体が金縛りにあったかの様に動かなくなった…。

 きっと霊感があるって人って、こんな感じなんだろう…と思いながら、何とか体を奮い起たせ、洗面所に行き顔を洗った。


部屋に戻った陽介は、スーツに着替え、

本来ならば、9時に駅に向かうところ一時間早い8時に家を出た。


 昨夜の恐怖が忘れられないからだ。


一刻も早くここから離れたい、心より先に体が動いていた。

駅に着いた陽介は、海の手線内回りに乗車し、会社のある『山宿』で下車した。


 駅から会社までは徒歩10分、出勤時間まで

余裕に一時間余っていた。


「早く着いてしまった…いつもだったらギリギリに家を出るのに… でもしょうがないよな、隣があんな危ない奴だなんて思わなかったから…」


「しかし、大体そんなに大音量で聴いてないし、入居する時に、鉄筋コンクリートで、防音がしっかりしてる部屋だって、『担当』が言ってたし!」


「いや、でも実は壁が薄いって…気が付かなかった俺も悪いのか…」


「わかるか!そんなもん!」 何故か陽介は少し苛立ち始めていた。


 当時聞いていた話と違っていたのだから無理もない。

人間は不思議なもので、どういう状況であろうが腹が減る。

 今朝は朝食を抜かしていた、正確には抜かすことになった。


周りを見渡し店を探す。

目に飛び込んで来たのは、お洒落なカフェだった。


「さて、出勤時間までカフェで暇を潰すか」


そう独り言を言うと陽介は、店に入って行った。

 店内は綺麗な装飾で飾られ、クラッシックが、流れている。

 先程までの苛立ちが少し緩和された様な気がした。


 陽介は普段コーヒー等を飲まないが、この日は違った、『モーニングコーヒー』という言葉がある、朝は優雅にコーヒーカップを片手に落ち着き飲むものだと誰かが言っていた。


『誰か』?とは誰か?全く思い出せないが、記憶の片隅にそれはあった。


「コーヒーってこんなに心を落ち着かせる飲み物だったんだな~」


「もっと早く飲んでおくべきだった、これからはモーニングコーヒーを日課にしようかな」


陽介はコーヒーを飲みながらしみじみ思った。


 店内から見える窓の向こうの人達は

まさか、昨夜俺が危ない目に遭ったなんてわからないだろうなと

 逆に俺から見た人達の中にも色々な不安や人生を抱えている人達がいると思うと、人間一寸先は闇という言葉が過る。


「そろそろ、行くかな」



陽介はレシートを持ちレジへ向かう。


「お会計450円になります!」


可愛らしい制服に身を包んだ、愛想の良さそうな女の子がそう言ってきた。


「はい!コーヒー美味しかったです、お陰でスッキリしました。」


陽介はコーヒーの美味しさを知ったからか、苛立ちが無くなったか解らないが、とにかくお礼が言いたかった、だから満面の笑みを浮かべてそう言った。


 店員はやや、不思議そうな顔をしていたが


次の客が来たので、案内する為に店内奥へと消えていった。


出勤時間まで後20分程ある、陽介はゆっくり歩く事にした。


すれ違う人達の中、何処からか陽介を呼ぶ声がする。


──先輩 ─陽介先輩 !


その声は人波の中に微かに聴こえた。


 辺りを見渡すと、そこに見慣れた人物が手を降っていた。


後輩の笹山裕翔だった。


彼は陽介の会社の後輩、入社当時からお調子者で、いつも陽介を困らせていた。


 何かとあれば、先輩、先輩。

常識に考えて目上は名字で呼ぶものだ。

 だが、笹山にはそんな常識は通用しない。


「あのな、陽介先輩じゃなくて、漆原先輩だ」


「何回言えばお前は解るんだ?」


陽介は飽きれ顔で、笹山に言った。


 「すいません~ 漆原先輩、以後気を付けます!」


笹山は笑いながら反省の色もなく、ヘラヘラしながら陽介の肩を軽く小突いた。


「そういえば先輩、今日は早いですね~いつもギリギリに会社に来るのに」


「ああ、昨夜ちょっとトラブルがあってさ

早く出てきた」


「なんですか?トラブルってなんだか面白そうだな~」


笹山は興味津々だ、余計な事を言ったかな…


陽介は少し後悔した。


「教えて下さいよ~」


 「じゃあ、昼休みに教えるよ」


「分かりました~ ではお先に失礼します陽介先輩」


「おい!陽介先輩に戻ってるぞーっ!」


陽介がそう叫んだが、既に笹山の姿は見当たら無かった。




コピー機や電話の鳴り響く音や、キーボードを打つ音が聴こえてくる。


 ここは陽介が働いている会社だ。


有名会社の子会社で、まぁまぁ良い給料を陽介は貰っている程だ。


「漆原!今日の会議に必要な書類は出来ているか?」


 「はい!出来ております、只今再チェック中です」


「そうか、本日は部長がいらっしゃるからな、気合い入れて挑めよ」


「はい!分かりました、本日は宜しくお願いします」



そう言うと課長は会議室へと向かった。


陽介は急いで再チェックを済ませ、会議室へと足を運ぶのだった。


会議はミスも無く、無事に終わった。


 時刻は正午を周っており、陽介は笹山と会う為に、社員食堂へと向かった。


食堂には色んな部署の人間が一同に集まる為

混雑している。


 陽介はいつもは混雑を避け、10分程遅らせて昼食を食べる。

だが今日は別だ、後輩の笹山と待ち合わせしているからだ。

陽介は食堂でAランチを頼むと、窓際の席に座った。


社内から見る景色は絶景だ。


 夏休みにはサーファーや若者達で賑わうであろう、浜辺が見える。


「ああ~今年こそ彼女作って、浜辺デートしたいな」


陽介は独り言をもらした、あまりにも妄想が酷かったのか、何者かが近付く気配に気付かない。


「陽介先輩は今年俺達後輩と、バーベキューの刑ですよ!」


ハッ!っと振り向くといつの間にか笹山が


席に座っていた。


 相変わらずヘラヘラしながら笑みを浮かべている。


「おい、居るなら声掛けろ、人の独り言を勝手に聞くな! そして夏休みの予定を勝手に決めるな!」


「すいません~陽介先輩があっちの世界へ行っていたので、暫く様子見てました」


まるで悪戯小僧の様な笹山、こいつはいつも

いつも、笑っている。


陽介は時々思う、頭のネジが外れているんじゃないかと。


「それで、陽介先輩が今朝話していた、トラブルって何ですか~?」


笹山が目をキラキラさせて聞いてくる。


「ああ、そうだったな、実はな昨夜こういう事があってな困っていたんだよ」


陽介は笹山に昨夜の事をありのままに話した。


「なるほど、それは大変でしたね~、先輩下手したらニュースになっていたじゃないですか……惜しかったですね!」


「おい!お前な、こっちは死にかけたんだぞ


そのリアクションは無いぞ」


 「じょ、冗談ですよ~怒らないで下さい、という事は先輩はそのマンションから出たいんですね?」


「ああ、隣人があんな奴だなんて思わなかったから、家賃更新したばかりだけど、出ようと思う。」


 「うーん今の時期だとあまり良い物件が見付からないと思いますよ、それに引っ越してもまた同じ事になりかねないし」


珍しく笹山が眉間にシワを寄せて考えている。


 俺の為だろうけど、つい思ってしまう、明日は雪が降るんじゃないかと。


「お!笹山お前詳しいな!俺こういう事に疎いからさ頼むわ」


 「任せてください!俺の友人管理会社で働いてますから。」


 「そうですね~隣人がどんな人か予め知れたら良いと思うし、今回騒音トラブルだったので、逆に生活音に慣れてみたらどうですか?」


笹山が人差し指を立たせながら、説明する。


それを見て陽介は、いつもこうならどれだけ

助かるか、、と思った。



「うん!そうだ、そうしましょう~ 『ルームシェア』!


それだったら隣人や生活音に対して免疫付きますよ!」


 「ルームシェア?ってアレか?多人数で住むやつ」


「そう!そうです、家賃を皆で払って、一緒に住む共同生活です。これなら条件に合います。どうですか?出来そうですか?」



 「うーん、イメージはあんまり浮かばないが、今回の事で俺も反省したし、新しい所に住んでも同じなら、いっそうの事ルームシェアで慣れてみるか」


「絶対その方が良いですよ~ じゃあ、俺が陽介先輩の為に探しておきますね、日頃のお礼として」


「では、帰ったら『Rin』しますので待ってて下さい~」



手を振りながら笹山は去った。

 因みにRin とは携帯用アプリの事だ。

通話やメッセージのやり取りが無料で出来る。


「さぁて!後半頑張るか」


陽介は食器を片付けると自分の部署へ戻って行った。



時刻は夕方17時、定時を周っていた。

 陽介の会社は今話題のブラック会社ではなく

ホワイトで、残業無しの定時帰宅が出来る。

陽介はいつも通り定時で上がり、最寄りの駅に着いた。


 家に近付く度、昨夜の事を思い出す。

マンション入口に着き、ポストを開ける

 すると見慣れない名前の場所から、手紙が届いていた。

オレンジ色の封筒で、中には紙が一通。

封を開け手紙を見てみると、驚愕の内容が書かれていた。


部屋に入った陽介は、改めて手紙を読み返していた。

あまりのショックに内容が入って来なかったのだ。


手紙にはこう書かれていた。



漆原様、突然の事誠に申し訳ありません。

早急にお伝えしたく、手紙をお送り致しました。

この度、当マンションで騒音騒ぎがあり、

住人の方から苦情が入りました。

住人の方に詳しくお話を聞いたところ、お隣の方と漆原様が揉めていたとの事でした。

事実確認として、隣の方にも聞きましたが、

漆原様が、いつも大音量でテレビを付けていて五月蝿く、睡眠の弊害を行っていて、仕事に支障が出ているとの事でした。

弊社と致しましても、近隣住民の方に迷惑を掛ける方に、これ以上賃貸契約を、結んで頂くのは困難と判断致しました。

誠に申し訳ございませんが、本日から半年間後

賃貸契約を破棄させて頂きます。


「は?…なんだよこれ、事実と全く違うじゃないか!」


陽介は読んでいた手紙を叩きつけた。

書いてある内容は、あまりにも異なっていたからだ。


「可笑しいだろ!、俺隣の奴に殴られそうになったんだぞ」


「俺は被害者だろ!、なんなんだよこれ」


陽介が怒りで興奮してると、ピロンと

音が鳴った。

笹山からRin が届いたのだ。

笹山からのメッセージにはこう書かれていた。




お疲れ様で~す陽介先輩

ルームシェア良い所見つかりましたよ!

場所は海の手線、外回りで今の所から遠くなっちゃうんですが、大丈夫ですか?

家賃は3万円+家賃1ヶ月分です。

なんと、光熱費やネット代は家賃込みです!

最高でしょう~

後はホームページを見てください。


流石笹山、Rin でもキャラがブレていない、

大体の人間は、メッセージの自分とかけ離れた感じになるのが一般的だが、こいつはブレ無い

だが、笹山のメッセージのお陰で少し怒りが緩和された。


「本当に良いタイミングだ、まぁ遅かれ早かれ家を出るつもりだったし、こうなりゃルームシェアやってみるか。」



「笹山が、言ってたホームページでもみるか。」


陽介はパソコンを立ち上げ、ホームページを

観てみた。


そこには、工場を改造し、全部屋20程あり、屋上にはガーデニング等をする場所があるらしい、しかもルームシェアを、経営してるのは老夫婦。


外観は中々良かった、駅からも近いし、コンビニやスーパーもある。


「おお!凄く良いところだな、ルームシェア初心者の俺にピッタリだ!」


「早速内見の申し込みをするかな。」


陽介は申し込みを済ませると、笹山にお礼のメッセージを送り、風呂に入り、夕食を済ませ、早めに就寝した。


それから、一週間が経った。


今日は内見の日だ、海の手線外回りにある

下野駅で下車し、徒歩5分、大きな工場が見えてきた。


「あれだな、一見工場みたいだけど、外観はしっかりしてるみたいだな。」


辺りには、金属や色んな物が転がっており、

陽介が物珍しく見渡していると、一の老人が話掛けてきた。


「もしかして内見の方ですか?」


 「はい!そうです漆原と申します。」


「お待ちしておりました。」


年は60代位のおじいさんで、物腰が優しい印象。しっかりハキハキ喋っていて、若々しい感じがした。

 陽介はシェアする場所を案内され中に入ると、沢山の部屋があり、それぞれ区画に別れていて、部屋の材質は木で出来ていた。


「如何ですかな?、このマンションは」


 「マンション?ああ、凄く良いですね、とても工場の中には見えないです」


「マンションの部屋は全部私が作ったんですよ、こう見えても昔から工作が得意でしてね、今はこうして大工の真似事をして部屋を作っているんですよ」


 「そうなんですか、器用なんですね素敵な部屋です。」



陽介は戸惑いながら答えた、どう見てもマンションには見えないからだ。


 暫く話し込んだ後、洗濯機やお風呂場、屋上等に案内された。


 中でも驚いたのは浴室だ。

シャワーだけで、湯を張れない状態になっていた。

 それを除けば利便性も良いし、ルームシェア初心者の陽介にとっては、ましかもしれない、丁度近付くに銭湯もあるらしい。



「本日は内見ありがとうございました、俺ここに決めました!」


 「そうですか、では次回契約を結びたいので、家賃と前家賃、身分証明書と、印鑑をお持ち下さい。」


「解りました!では来月からお世話になります!」


陽介はマンションの老人、オーナーに挨拶をし、足取りを軽くしながら、帰路に着くのだった。




陽介の新しい生活が始まる、このマンションの住人との出会いにより、陽介は様々な人間模様を垣間見、そして、トラブルに巻き込まれていく。



運命の歯車はゆっくり周り始める


════════════════

さて、陽介はこれからどんなトラブルに巻き込まれていくのでしょうか?


今のところ自分磨きとは何にも関係無い展開ですが、ヒロインすら登場しませんね、焦らず

陽介の成長を見守って頂けたらと思います。


それでは、次回 2話でお会いしましょう。


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