第173話
「ねぇじいちゃん…」
エイトはゆっくりと歩きながら魔法陣に近づいていく。
「僕、じいちゃんに助けてもらって…居場所を愛をもらって…どうやったら恩返しが出来るんだろってずっと考えてた」
「エイト?」
いつもとは違うエイトの雰囲気にカズキは首を傾げ声をかけた。
「僕は本来ならきっとじいちゃんに会わなければあそこで死んでたんだと思う、だから僕がここまで幸せに生きながらえたのはこの為だったのかも…」
エイトは自ら魔法陣の中心に立った。
「エイト!」
クイーンはエイトの覚悟に気がついて傍へと走った。
「クイーンは駄目…」
「嫌だ!エイトの居ない世界なんて生きてる意味がない!だから一緒に連れてって!それに…私も居ないと無理なんだよ」
エイトはグッと考えると困った様に笑ってクイーンに手を差し伸べた。
クイーンは嬉しそうにその手を掴むと二人並んで魔法陣の上に立ちカズキとナナミを見つめた。
「カズキじいちゃん、ナナミ、幸せをありがとうございました。僕は二人の息子に慣れて本当に幸せだった…最後に親孝行出来てよかった…」
二人に感謝を込めて笑顔を見せる。
「二人いればきっとナナミも一緒に帰れるよね?だってじいちゃんは凄い勇者なんだもん」
エイトは覚悟を決めて魔法陣に触った!
「エイト!」
ナナミがやめてと悲痛な顔で叫ぶと
「バカヤロ!」
カズキは地面に剣を思いっきり突き刺した!
カズキの刺した剣の亀裂は地面を割って魔法陣の方まで届いていく。
「あっ!」
エイトが声をあげる!
魔法陣はエイトとクイーンの間で綺麗に割れて魔法陣としての機能を失った。
「じいちゃん…帰れなくなっちゃったじゃん…」
エイトは魔法陣を大事そうに触ると…
「こんな息子の命の代わりで戻って嬉しいわけないだろ!」
カズキは魔法陣にさらに剣を突き刺して粉々にしていく。
「ああ!」
もう復元は不可能なほどバラバラにすると…
パンッ!
カズキはエイトの頬を叩いた!
「俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!」
「じいちゃん…だって僕じいちゃんに幸せになって欲しい…僕に返せるのはこれだけなのに…」
「バカ息子…もうお前にはたくさんの幸せを貰ってる…お前の成長を見るのが一番の楽しみなんだよ」
カズキはエイトを力強く抱きしめると…
「うっ…うわぁぁぁ!!」
エイトが我慢していたものが吹き出すように泣き出した!
「ぼ、ぼく…ここにいていいの?まだじいちゃんたちの子供でいいの!?」
「当たり前だ…お前はずっとじいちゃんの子供だ。それになぁもう帰る気なんてさらさらないんだよ…お前を残して帰れるわけないだろ?」
「じいちゃん…」
「カズキの言う通りよ」
ナナミも傍に来て涙を流してエイトを抱きしめた。
「うぅぅ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい!僕じいちゃん達とずっと一緒いたい!」
「それでいいんだ」
カズキは大粒の涙を流すエイトを見て…自分の故郷に帰る意志をエイトに会ったことで無くしていた事に気がついた。
泣きながら引っ付くエイトを見ると
「ふっ…しかしその格好、エイト意外と女の子でも可愛いな」
ぶっと吹き出す。
エイトは自分が笑われた事にぷうっと頬を膨らませると…
「僕はカズキとナナミの息子のエイトだ!絶対男に戻るんだから!」
怒りながらも大好きなじいちゃんに抱きついた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます