第162話

「じゃあ行くか」


カズキはラルクが遠ざかるのを確認すると立ち上がって先の塞がれた壁を見つめた。


そこにはクイーンが落とした大きな石があり隙間からは通れそうもない。


「カズキ、私が退かそうか?ナナミどいてな」


ラネットがナナミを壁から離れるように言うと壁のような石を両手で掴んだ!


ゴリゴリと音をたてながら石を掴むと指がめり込む!


そしてそのまま上に持ち上げた。


「ラネットさんすごい力持ち!」


ナナミが驚いていると


「あれくらい俺にも出来る」


カズキがふんっと出来た隙間から先に進んだ。


先は所々壊れて崩壊しているが道のようなものがかろうじてわかった。


「よし、行くぞ」


カズキの合図にラネットが扉を塞いでいた瓦礫を退ける。


そっと扉を開いて中の様子を伺うが誰も居ない。


「大丈夫そうだ、行くぞ」


カズキは壁や天井が壊れた道を進んでいく!


「カズキ、こっちだ。こっちの方からクイーンの匂いがする」


するとラネットが石を退かしながら鼻をひくつかせる。


「よし!ラネットとりあえずクイーンのところに、そこにエイトがいる可能性も高い!」


カズキ達はラネットの後を追った。







「エイト!エイト!起きて…」


エイトはクイーンの声に目を覚ました…


「ク、クイーン?あれ?ここ…」


エイトは頭を押さえて起き上がる。


エイトが起き上がった事でクイーンはほっと胸を撫で下ろした。


「よかった…エイト全然起きないから心配した。このままだったら…ここの奴ら殺すところだった」


「クイーン、そんな事言っちゃダメ」


エイトは苦笑すると怒っているクイーンの頭を撫でた。


するとクイーンは嬉しそうに顔をほころばせると、ピクっと反応して扉を見つめる。


クイーンの反応にエイトも扉に集中すると…


ガチャ!


扉が開いた。


「あっ!起きたか!」


光を背に顔が見えない、エイト達は目を細めるがその声に覚えがあった。


「フールさん?」


フールはエイト達に近づく。


「よかった、目を覚まして…あのまま気を失ったから死んだのかと心配したぞ」


フールがエイトに手を伸ばすと…


バシッ!


クイーンがその手を払いのけた!


「エイトに触るな!」


フッー!と牙をむき出し威嚇する。


「クイーン!フールさんだよ?味方だよ!」


「違う…こいつからエイトと同じ薬の匂いするもん」


「匂い?どんだけ鼻が聞くんだよ。全くめんどくせぇガキだな」


ニコニコと笑っていたフールはクイーンの言葉に笑うのをやめた。


「え?フ、フールさん?」


エイトはフールを見上げると


「いいからこい、そこの#女共__・__#」


「女?」


エイトは自分達以外に誰か捕まっているのかと周りを確認するが誰も居ない。


キョロキョロとしているとフールが鼻で笑った。


「はっ!勇者の子供のくせに鈍い野郎だな!あっ!もう野郎じゃないな…お嬢さん」


フールはエイトの髪を掴むとそのまま立たせる。


「い、痛い!離して!」


エイトは髪を捕まれ宙ぶらりんにされるとバタバタと足をばたつかせた。


フールは構わずにそのまま外に連れ出すと鏡の前にエイトを放り投げた。


「自分の姿をよく見てみろ」


「い、痛たた…」


体を床に打ち付け起き上がると目の前に自分によく似た女の子が捕まっていた。


「わっ!ご、ごめん!」


ぶつかりそうな距離にエイトが謝るとその女の子も同じように反応した…


エイトが手を上げるとその子も同じように手を上げる…


「エイト!」


するとクイーンが駆けつけて後ろから抱きついた。


そして鏡の中の女の子にクイーンが抱きつく姿が見える…


エイトはその女の子が自分だとやっと気がついた。

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