第113話
エイト達が風呂に入っている時ナナミ達はナナミの部屋でお茶を用意してダレンとのんびりと話をしていた。
「へー!ナナミさんは手作りの肌に塗る薬を作ってるのね」
「そうよ、化粧品って言うんだけどね。薬草と他の数種類の草花のエキスを使うのよ、ここまでの作るの本当に大変だったわ~」
ナナミが作った化粧品をダレンの手に乗せてあげると
「こう、パタパタって顔に付けるのよ」
「こうね」
ダレンはナナミが教えてくれたように頬に液体をつけると、スッーと肌に染み込む…
頬を触るとモチモチのプルプルになっている!
「す、すごいわ!これ!」
ダレンは何度も自分の肌を触ると
「やっぱり若いから浸透力がすごいわね~」
ダレンの肌をツンツンとつつく。
「あら、ナナミさんだって負けてないと思うけど」
ダレンが綺麗な肌のナナミを見つめると
「ここに来て良かったのはこの薬学と魔法だけね、後は…エイト」
ナナミが笑うと
「あら、それだけ?ナナミぐらいの人ならもっと楽しい生活が送れそうだけど…」
「そうね…私は普通でよかった…カズキと普通に学校に通って大人になって…子供が欲しかった…」
「普通に…って…学校って学園の事?カズキって元勇者なのよね?なら学園に通ってたんじゃないの?」
ダレンが首を傾げると…
「うーん…私達はちょっと遠い所からここに呼ばれたのよ…魔王を倒した後は帰れる約束だったのだけれどそれが叶うことはなかったわ」
「それが本当なら…私達が聞いてきた勇者の話と全然違うわね…」
「そうね…まぁ国を信じるか…ぽっと出の勇者を信じるか…」
「あなた達が身分を隠してここにいると言うことは皆、国を信じたのね。私も話を聞くまでそんな事になってるなんて考えもしなかったわ」
「私達はどうにか目立たずにここで静かに暮らすことを選んだ…子供を持たなかったのも私達が何かあったら残す子供が可哀想で…怖くて作れなかったの…でもそんな私達の元にエイトが来てくれた」
ナナミの顔に色がつく…
「エイトが来て私達の生活はガラッと変わったわ。エイトには感謝しかないわ大事な大事な私達の子供…」
「確かにいい子だわ…私もあの子がいなきゃ…生きてさえもいなかったかも」
クスッと笑うと
「だから決めたの…エイトの為に私達に出来ることをしようって…ねぇダレンさん」
ナナミはニコッとダレンに笑いかけると
「あなたこの化粧品、とっても気に入ってくれたわね?」
「え、ええ…」
「これね、魔力で調合してるから多分私にしか作れないの」
「えっ!」
「だからダレンさんがエイトの力になるってくれるなら、特別にダレンさん専用の化粧品を作ってもいいわ…」
「やるわ!」
ダレンはすぐに答えると
「まだ全部言ってないわよ」
ナナミが苦笑する。
「最後まで聞くまでもないわ!エイトちゃんは私の恩人でもあるの、その時からついて行こうって決めてたわ!それに加えて化粧品まで貰えるなら私に拒否する理由なんて無いもの!」
ダレンが鼻息荒くナナミに迫ると
「ありがとう、じゃあこれからもよろしくね」
「ええ!」
ダレンが手を差し出すとナナミがスっと手を取ると…
「あとこれが一番重要なんだけど…」
そう言ってナナミはダレンを掴む手をギュッと握ると
「エイトには絶対に手を出したら駄目よ…」
「は、はい…」
ダレンは手の痺れが脳まで届く気がして背筋が冷たくなった…
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