第110話

カズキは落ち着いて答えたつもりだったが、目の前にいたダレンがカタカタと震えて腰を落とした…


ラルクも顔を青くして下を向くと…


「カズキ…その殺気…抑えてくれ…」


ラルクの絞り出す声に、自分の殺気が漏れていたことに気がついた。


「あっ…すまん。エイトに俺と同じような思いをと思ったらついな…」


「戦う前に戦意喪失しちまっただろうが…」


隣のダレンを見ると、コクコクと無言で頷く…


「なんだ?せっかくここまで来たのに何もしないのかよ」


カズキがつまらんと肩を回して…


「ちょっとくらいどうだ?」


ダレンを見ると


「いえ…私のような者が相手に出来る方ではございませんでした。申し訳ございません」


ダレンは地面に頭をつけて深々と謝ると


「こうなると思った。カズキは別格なんだよ…」


「まさかこれ程とは…でもこんなに強いなら国を相手にでも戦えるんじゃ…」


「いいよめんどくさい。俺はナナミとエイトと楽しく過ごせりゃいいんだ…」


カズキが穏やかに笑うと


「お前がそんな風に笑えるようになるなんて…エイトのおかげだな」


「そうだなぁ、エイトのおかげでナナミも嬉しそうだし…ここで生きてく覚悟がやっとできた気がするよ」


「ここで生きていく?」


ダレンがカズキの言葉に引っかかっているが、カズキは構わず話を進める。


「戦わないなら帰ろうぜ、久しぶりにエイトと飯が食える。ナナミと二人ってもいいがついエイトの話になってな…やっぱり会いたくなっちまって」


カズキがサッサと帰り支度を始めた。


「じゃあ行きより少し早めでいいよな?」


「「えっ…」」


二人の返事も待たずに走り出した!




「ちょっ!もう無理!あと少しでしょ!歩きましょ~」


ダレンが先を走るカズキ達に声をかける。


「なんだ、だらしない」


カズキが仕方なしにスピードを落とした。


「本当に…何者…私よりかなり年上よね…」


「まぁ…そうだな…お前より少しは上かもな」


「えっ?…ねぇまさかあのナナミさんも同じくらいって事は無いわよね?」


「ナナミか?ナナミは俺と同じ歳だぞ」


「嘘!どう見ても若いじゃ無い!あなたよりかなり年下だと思ったわ…」


「まぁナナミは綺麗だからな…それに色々と化粧品も作ってるようだし…」


「けしょうひん…それって何かしら!?」


なんだか気になる言葉にダレンはくいついた!

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