第35話
「は、はい!山爺の薬がなくなってしまって…今日部屋で倒れてたんです…」
おばあさんに説明すると
「あの爺…だからもう少し薬を持ってけって言ったのに…」
ブツブツと言いながら何かをゴソゴソと探している。
「ちょっと待ってな!」
そう言うとおばあさんは後ろに消えて行ってしまった…
「あっ…」
一人に待たされているとおばあさんが瓶にいっぱいの薬を詰めて戻ってきた。
「はいよ、次はもう少し早めに行くと伝えといてくれ!」
「は、はい!ありがとうございます!あっ!これお金です…足りる?」
僕は預かったお金を渡す…しかしたくさん入っている薬に少し不安になって聞いてみた。
「ちょっと足りんが今度爺の所に行ったら貰うから大丈夫だ」
おばあさんは要らんと手を振る。
「えっ…でも…」
僕は何かないかとカバンをあさるとナナミが持たせてくれたジャムに気がついた。
「こ、これよかったら…僕のおばあちゃんが作ってくれた美味しいジャムです…」
恐る恐る差し出すと
「ふーん…」
おばあさんは訝しげに受け取っておもむろに瓶の蓋を開けると指でひと舐めする。
おばあさんはジャムを舐めるとカッ!と目を見開いた!
「美味い!」
おばあさんはもう一口とジャムを舐める。
ナナミのジャムを美味しそうに食べてくれるおばあさんに僕はすごく嬉しくなると
「でしょ!凄く美味しいんだぁ~焼きたてのパンに塗れば何枚でも食べられるよ!」
ニコニコ笑いながら教えてあげると…
「お前…名前は?」
おばあさんはジャムの蓋を大事そうに閉めて僕の顔をじっと見つめた。
「あっ!名前も言わないで失礼しました!僕エイトって言います」
僕はペコッと頭を下げた。
「あの山爺には似てないね…」
「山爺は…ご近所さんなんです」
「そうか…また来ることがあるならこれを持ってきてくれ。そしたらサービスするよ」
「うん!言っておくね!おばあちゃんありがとう!」
「お、おばあちゃん…」
薬屋のおばあちゃんが僕の言葉にびっくりしていた。
「良いもん貰っちまったからね…何か交換出来るもんは無いかな…」
おばあちゃんが周りをゴソゴソとあさると
「何か欲しいもんはないのかい?」
「えっ!薬が貰えたから大丈夫です!」
いらないと首を振ると
「馬鹿野郎。このジャムにはそれだけの価値があるんだよ!いいから欲しいもんを言いな!」
おばあちゃんに言われて考えると最初に頼まれたチーズを思い出す。
「それなら…チーズが欲しいです」
「チーズ?そんな物はうちには無いよ」
キッパリと言われ、少しガッカリすると
「この先の店に売ってるから行ってみな、その時にこれを出すんだ。そうすればきっとタダでくれるからね」
おばあちゃんはニヤッと笑うと紙袋を僕に渡した。
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