元勇者のおじいちゃんに育てられた子供は普通じゃありません

第20話

(ここは…)

俺はハッと起き上がると隣に見た事もない人間が寝ていた…

(誰だ…)

グルルル…

俺は離れようと脚を動かそうとすると…

「動くな…」

暗闇の中…恐ろしく殺気の孕んだ声がした。

その声を聞いたら瞬間全身の毛が逆立った！

一瞬迷ったが声がした方をチラッと見る…そこには暗闇の中瞬きもせずに男が一人俺を睨みつけていた…

「その子が起きる…外で話そうや…」

俺は圧倒的な力の差を感じて従う事しか出来なかった。

外に出ると月明かりで姿がハッキリと見えた…

(思っていたより年を取った男だな)

それが最初の印象だった…

そんなに大きな体つきでもない男が腕を組み仁王立ちで立っている

その姿は何倍も大きく感じた

「それで？お前あんなところで何をしていた」

まるで俺が喋れることを知っているかのように話しかけてくる…

俺が無視をしていると

「そうか…喋る気は無いと…なら一方的に話すぞ、お前は岩山でロックバードの群れに襲われていた、そこで気を失っていた所を助けて連れてきた」

助けた？俺を？

怪しむように男を見つめる。

「正しくは仕方なく助けた…起きた時に隣に寝ていた子がいただろ？あの子が最初にお前を助けたんだ俺はあの子の願いを聞いて助けただけだ…」

男の言葉に思い出す…

そうだ…俺は確かに岩山でロックバードに襲われていた…

確か…岩を落とされて…

ぶつけられた場所を思い出すが痛みは無かった。

男は俺の考えを読むかのように答えた

「結構な傷でな…あの子が心配するから回復魔法をかけてやった」

ピクッ！

回復魔法だと…人が魔獣に？

「やっぱりお前俺の言ってる事わかってるな…見た目は黒狼だが…色がちょっと違うな」

ギクッ…

こいつはどこまで知っているんだ…

俺は警戒を強めた…ジリジリと距離をあけて何時でも逃げ出せるようにするが…

「逃げる気か？逃げられるとでも思っているのか？」

男が笑う…

思ってないが…このままやられる程落ちぶれてない！

逃げると思わせて男に襲いかかる！

「グルウウゥ！」

「だよな」

男は見透かしていたかのように笑ったまま避けようともせずにそこに立っていた！

舐めやがって！

男の言葉に首元目掛けて襲いかかるが…

「グッァ！」

首に到達する前に首根っこを掴まれた！

「やっぱり…黒狼にしちゃ小さいし…汚れてよく見えないが…お前毛が白くないか？」

男が掴む手に噛み付こうともがくが離れる気がしない…

「おい！暴れるな！暴れるなら投げ飛ばすぞ」

男の言葉を無視して暴れまくっていると…

「調子にのるなよ…」

男は俺を軽々と振り回すと地面に叩きつけた…