第12話
「じゃあ行ってくる」
「いってきます」
カズキは笑顔で送り出すナナミに声をかけた。
エイトもカズキの真似をするようにナナミに笑いかける。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
ナナミはカズキの頬に触れるだけのキスをすると屈んで隣のエイトの頬にもキスをした。
「エイト、カズキから離れないようにね」
「うん」
エイトはカズキの服をギュッと握りしめた。
「よし!エイト行くか!」
カズキはエイトを抱き上げると肩に乗せて肩車をする。
「少し走るぞ、しっかりと捕まっているんだぞ」
「はい」
エイトは頷くとカズキの頭にギュッと抱きついた。
エイトからの心地よい温もりにカズキは微笑むと森に向かって走り出した!
エイトはカズキのあまりの速さにギュッと目瞑る。
風が頬に容赦なく当たった…
「エイト!大丈夫か?」
カズキが声をかけるがエイトから返事がない、カズキは速度を緩めると…
「エイト?」
止まってエイトの事を確認する。
「ぱっ!」
エイトは目と口を開くとカズキが驚いた顔をしてエイトを見つめていた。
「エイト…この頭どうした」
カズキがクックッ…と笑いだす!
エイトの髪はカズキの風圧で上に上がっていた…
「悪い、エイトには速すぎたみたいだな、もう少し速度落とすな」
カズキはエイトを肩からおろして自分の胸の方に向けて抱きしめると
「これなら少しは風の抵抗が少ないだろ」
カズキはエイトを抱えて少し速度を落として走り出した。
しばらく走ると
「エイト、大丈夫か?」
「うん!カズキあったかい」
エイトはカズキの胸に頬をすり寄せる。
「そうか」
カズキは嬉しそうにエイトをしっかりと抱きしめ直した。
「さて今日はここら辺で狩りとするか」
カズキは適当な場所でエイトを降ろすとしゃがんでエイトの顔をじっと見る。
「いいか、俺の姿が見える所にいるんだぞ」
コクコク
エイトが頷く。
エイトはカズキの邪魔にならないようにじっと身を潜める…こういうのは得意だった…。
カズキは大人しく木の影に隠れて息を殺すエイトに近くと
「エイトは本当にいい子だな、俺の邪魔をしないようにしてくれてるんだな」
エイトの頭に手を乗せて撫でるとうんと嬉しそうに頷いた。
「ありがとうな…でも大丈夫。エイトが見える所に居てくれれば何してても大丈夫だ!俺は元勇者だぞ!」
カズキがドンと胸を叩く!
「そうだな…じゃあエイトにはナナミの為に花でも摘んでやってくれ。それをお土産にしたらナナミが悦ぶぞ~」
カズキが笑って教えてやるとエイトは少し考えてナナミの喜ぶ顔を思い浮かべる!
「うん!ぼく、はな、つむ」
エイトが顔を輝かせた!
「よしよし!じゃあこの辺りの花を摘んでるんだぞ、遠くには行くなよ」
エイトは頷くと早速花を探し始めた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます