第10話

「そういう事があって…俺達は城を飛び出して行ったんだ。俺達は魔法で姿を偽って色んな町や村を点々としてようやくこの地に住み今はこうして暮らしているんだ」


カズキの話を子供は真剣に聞いている。


「そういう訳でな…もうだいぶ時は経ったが未だに俺達は追われる身なんだ…それでも構わないなら坊主はいくらでもいてくれていいんだよ」


カズキが子供に聞くと…子供は離れたくないと言うようにギュッっとカズキの服を掴んだ。


「こんな俺たちだが一緒にいてくれるか?」


カズキが聞くと、子供はこくんと頷いた。


「そうか…」


カズキとナナミは嬉しそうに見つめ合った…。


「よし!なら今日からお前は俺達の子供だ!」


カズキは優しく子供の頭に手を乗せる。


「じゃあ名前を考えてあげないとね!」


ナナミがカズキと子供を挟んで反対側に座る。


「何がいいかな!かっこよくて、可愛くて幸せになれそうな名前がいいなぁ~」


ナナミがうーんと悩みながら考えている。


「君はなにかある?こんな名前がいいとか?」


ナナミが顔を覗き込む、子供は首を傾げ


「カズキ、ナナミ…つけて…」


子供が一緒懸命言葉を出す。


「俺達につけて欲しいのか?」


こくん…


「なら…エイトってどうかな?」


ナナミが子供とカズキを見る。


「エイト?8って事か?」


「うん、一樹カズキ七美ナナミで1+7で8、私達の子供って意味でエイト」


「エイト…ぼく、エイト?」


子供がナナミに確認する。


「うん…どうかな?」


子供は頬を染めて恥ずかしそうに笑って頷いた。


「お!エイトも気に入ったみたいだな!じゃあ今日からお前はエイトだ!俺とナナミの子供だ!」


カズキはエイトとナナミを抱きしめると二人を抱きあげた!


「ちょっと!カズキ!」


「わぁ!」


ナナミとエイトが驚いて声を上げるがカズキは嬉しそうに二人を持ち上げたままクルクルと回る!


そんなカズキをみてナナミも嬉しそうに笑った。


カズキがようやく落ち着くと…


「じゃあエイト…お前は俺達の子供だが外では俺達の事をおじいちゃんとおばあちゃんって説明するんだぞ、さすがに歳が離れすぎてるからな」


「うん」


「それと…お前がもし俺達の元から出ていきたくなったらその時は気にせずに行け!」


「えっ…」


エイトが悲しそうな顔をする。


「カズキ…」


ナナミがカズキを止めようとするが


「大事な事だ…」


カズキが真剣な顔でエイト‪を見る…


「俺達といる事でお前が悲しんだり苦しんだりするのは見たくないんだ…その時は俺達を置いて出ていっていいんだ」


優しい笑顔で微笑む…エイトはカズキを見つめるとフルフルと拒否するように首を横に振った。


「今はわからなくてもいい…その時がきたら考えるんだ」


エイトは納得いかない顔をして俯いた…。

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