第3話

その日、あまり寄り付かない村に下りたのは必然だったのか…


俺は魔法で姿を変えると村に買い物に行った…国から追われる身としてはあまり人前に出たくないが食料が無くてはどうにもならない。


見た目を変えているからまぁバレる事は無いだろうが…


無事誰にも気付かれることなく買い物を終えて家に帰ろうとしていると、橋の下に何かうずくまるのを見つけた…


動物か魔物か?


チラッと見ると、それは年端もいかない子供だった…


髪はボサボサでこの寒い雨の中肌着一枚で震えていて、靴も履かずにいたであろう足の裏は血で滲んでいた…


その子は泣く事もなく何かを我慢するように唇を噛み締め震えている…


(いや…俺が拾ってもこの子が困るだけだ…)


そう思って通り過ぎる…しかし道半分来たところでくるっと向きを変えて早足で戻ってしまっていた。


するとそこには先程と同じ格好でその子が倒れていた…しかしもう震えは止まっている。


近くには死体に群がる魔鳥が子供をじっと見つめていた…


俺は持っていた布でその子を包んで抱き上げると…


魔鳥が不服そうにギャーギャーと騒ぎ出す。


飯を持っていくなとでも言うように…


俺はギロっと一睨みして殺気を飛ばすと…バサァッ!


魔鳥が逃げるように飛び去っていった…


俺は見た目以上に軽い子供を連れて帰路についた。



家についた俺を待っていたのは最愛の妻だった…彼女は俺の手元を見るなり


「まぁ!どうしたのその子!」


驚きの声をあげた


「道で倒れていた…あのままだと死んでしまいそうで思わず連れてきてしまった…」


俺が連れてきた事がよかったのか悩んでいると


「あなたのした事は正しいと思うわ、いつでもね…」


妻は俺が考えている事を見透かすようににっこりと笑うと俺達を笑顔で迎え入れた。


子供を空いている部屋のベッドに寝かせると布団をかけてあげる…時折苦しそうにうなされる子供の頭を撫でるとほっとしたように顔を緩める…その姿が愛おしく感じた…


「起きたらきっとお腹が空いてるわよね、私今のうちに何か作っておくわ!いきなりお肉とかよりはスープみたいな優しいのがいいわよね!」


妻は久しぶりの客人が来たようにウキウキしていた。


子供をベッドに寝かせてながら時折様子を見に行った。


何度目かに部屋に行くと子供が起き上がり布団に顔を埋めていた…


声をかけると怯えた顔でこちらを見る…その目には光を感じない…


こんな小さな子供がもう生を諦めた様な顔をしていた…


俺はなるべく刺激しないように優しく話しかけた…


気分は?痛いところは?


近づいて顔を見ると髪に隠れていたおでこの辺りが赤黒くなっている…


痛そうな怪我を心配して手を伸ばすと…ビクッと肩を動かし怯えるように体を強ばらせた…


(なんだ、この反応は…まるで叩かれるのを恐れてる?こんな小さな子が?)


少し迷ったがそっと頭に手を乗せて回復魔法をかける…やはり怪我だけは治してやりたかった。


怯える子に安心させるように声をかけ腹は減ってないかと聞くと、正直な腹の虫が鳴って答えた。


思わず笑うと、子供は拒否するように首を振って自分の腹を殴りだした。


鳴るな!とでも言うように腹をギュッと押さえていた…


なんて痛々しいんだ…


子供の叩く手を止めるとなり続ける腹に子供が気まずそうにする…俺は笑って誤魔化してやると子供の肩にそっと手を置くと優しく背中を撫でていた…

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