第2話
「おや…起きたか?」
ドアが開く音が聞こえると人が入ってきて声をかけてきた。
僕はバッ!と顔をあげるとそこには優しく微笑むおじいさんと呼ぶには若々しい白髪頭の男の人が立っていた…
「気分はどうだ?どこか痛いところはあるかい?」
近づいて来て僕に触れようとすると、僕は思わず目を瞑り身構える…
叩かれる!
反射的にそう思ってしまい体が強ばって手をだし身構える!
すると…叩かれる代わりに
ぽん
優しく頭に手を乗せると何か呟いた…その途端体の痛みが嘘のように引いていった…
「大丈夫…何もしないよ、それより腹は減ってないか?ばあさんが作る飯は美味いぞ~」
おじいさんが言うと、僕の腹がぐぅーと代わりに答えた…
思わず黙るように強く腹を叩きつける!
「やめなさい…体が言うことは正直だ素直に鳴らしておけばいい…」
おじいさんは叩く僕の手をそっと止めてくれた。
僕は伺うようにおじいさんを見るとまた腹が鳴る…
「あはは!ほらな腹は正直だな!待ってな今持ってきてやるからな」
おじいさんが優しげな表情で手を伸ばすと背中に触れた…そしてそのまま背中を撫でるとそっと手を離して部屋を出て行った。
僕はほっと肩の力を抜いた…人といると緊張する…こんなに人と近くで話すことなんてないから…
このまま逃げようかと思っていると、おじいさんがいい匂いがするスープが入ったお皿を持って現れた…
「ほら坊主これを飲みな体が温まるし美味いぞ~」
僕は受け取れずにいると
「心配ない、ほら俺がちょっと飲んでみるぞ…」
そう言ってひとさじすくって飲んでみせた。
「うん!やっぱりばあさんのスープはうんまいなぁ~」
おじいさんがあまりに美味しそうにするので僕の腹がまた悲鳴をあげた…
僕は顔を伏せる。
腹がなると怒られる…卑しい子だと睨まれから…
すると目の前にお皿を出された…お皿には黄色に輝くスープがよそわれていた…香ばしい香りが鼻をくすぐる…
「いいから…飲んでみな」
おじいさんがひと匙すくって僕の前に指し出す…そのあまりにも優しい顔と声に僕はそっとスプーンに口を近づけた。
「熱いから気をつけろよ」
僕はスープを飲もうとすると熱さに引いてしまう…
「あっ!悪いな!」
おじいさんはフーフーとスープを冷ますと今度こそと僕の前に指し出す。
僕は少し冷めたスープをズッズッと音をたてて飲む…
ほんのり温かく甘いスープが体を通って行くのを感じた…喉がカーっと熱くなり頬がジワジワと温まる。
あまりの美味しさにチラッとおじいさんを見ると嬉しそうにまた少し冷ましてすくってくれた…もう一口もう一口と口に運ぶが上手く飲めない
「坊主…大丈夫だ、ゆっくり飲むんだ。これは全部お前の物だからな」
おじいさんが持っていた布で僕の顔を拭いた…その時初めて僕は泣いてる事に気がついた…
スープを飲み終えて落ち着くとおじいさんに頭を下げた…
「ん?どうした?」
「あいがと…」
僕はお礼を口にしたかったが上手く言えない…声を出すと怒られので話さないでいた事で上手く喋れなくなっていた…
「僕、帰る、あいがと…」
もう一度お礼を言うがおじいさんの顔色が曇る…
やっぱり…僕が喋ったから…
ビクッと体を縮めると
「帰る場所はあるのか?」
おじいさんはそれだけ聞いた…僕は少し考えて首を振る。
もうあそこには帰れない…
「なら…ここの家に住むか?こんな老いぼれのじいさんとばあさんしか住んでないが…どうだ?」
僕は信じられない気持ちでおじいさんを見つめた…
おじいさんは優しく微笑んで僕の返事を待っている。
僕に言ったの?
ここに居ていいって?
そんな事初めて言われた…他に誰かいるんじゃないかと周りを確認するが誰もいない…
そんな僕の様子におじいさんが笑っている。
「返事はゆっくりでいいよ、とりあえず今日はもう遅いからここの家で休んで行きなさい」
おじいさんの大きな手の温もりが僕の汚い髪の上から伝わってくる…
僕はコクンと頷く事しか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます