1、神様が見えるなんて知らなかった
神路神社でバイトすることが決まってから、母親と二人暮らしだと言うと隆幸さんが家まで送ってくれた。母親はいつも以上に傷だらけの俺を見て真っ青になってたけど、隆幸さんが自分のとこの神社でバイトさせるって言うと喜んでた。
バイトは傷が治ってからでいいと言われてたけど、色々やってもらってばっかで気が引けて、俺は次の日まだ痛む体を引きずって神社に行った。
「ここの神社、ちゃんと入るの初めてだな」
そこそこ大きい神社だから存在は知ってたが、神頼みなんてしようと思わなかったから入ったことはなかった。とりあえず赤い鳥居をくぐって境内のほうに行くと、視界の上のほうにひらひらと何か入ってきた。
「は?」
鳥か蝶々かと思って視線を上げた俺は思わず固まって目を見開いた。視線の先にいたのは鳥でも蝶でもなく、昔話の絵本に出てくる天女みたいなひらひらの服を着た人だった。男か女かはわからないが、とにかくめちゃくちゃ美人だった。その美人は境内の屋根に腰かけて足をぷらぷらさせながら雀と戯れていた。
「俺、頭でも打ったかな…」
人間があんなとこにいるはずがないし、何よりあんな格好の人がいるわけがない。そう思って頭を振っていると俺に気づいた隆幸さんがパタパタと走ってきた。
「冬馬くん!傷は大丈夫かい?って、どうしたの?」
「あ~いや、今日から働かしてもらおうと思ったんすけど、なんか変なのが見えて…」
「変なの?それは、どこに見えるの?」
俺の言葉を聞いた途端、隆幸さんが真剣な表情になる。俺は驚きながら境内の屋根を指差した。
「あそこ。なんかのコスプレした人みたいなのが見える」
「…冬馬くん、とりあえず指差すのはやめようか。きみ、今までそういう変なのが見えたことは?」
「は?ないけど」
質問の意味がわからなくて首をかしげると、隆幸さんは一度境内に目を向けてから俺ににっこり笑った。
「きみが見たのはここの神様だよ。僕には眩しい光があるようにしか見えないけど、きみにはお姿がはっきり見えるんだね」
「は?カミサマ?はあ~!?」
思わず大声を上げた俺に隆幸さんは「やっぱりご縁があったんだね~」と呑気に笑っていた。
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