第40話 : 展示会での出会い

 展示会は全部で三日あり、今日が最終日だ。

 あれからテレビでもネットでも鈴華達のセクシーアピール(?)が話題になっていた。

 多分延べの放送時間とコマ数だと数億円くらいは優に宣伝効果を得ているのではないだろうか。他にNHKでも朝のニュースから随分流していたし、動画投稿サイトではどこでもバズっていた。

 ケガの功名とは正にこういうことだ。


 だから開発第二課の皆様も多少は許して欲しい。

 修正版が完成したら俺が一回はメシを奢りたいと謙虚に思う。



 そんなことを考えていたら、最終日の幕が開いた。

 俺達のブースに殺到する人、人、人・・・・

 皆、鈴華達の写真や動画を撮ってSNSにアップしている。

 中には鈴華のサインがほしいなどと言うアブなそうな人までいた。


 午後になっても人の間には収まらず、昼食も摂れない。

 こういう時にアンドロイドは凄いと思う。全然疲れで知らずで声を出し、パンフレットを配っている。


「お話よろしいですか」


 声を掛けてきたのは三十代後半と思われる白人の男性と付き添いらしき女性。

 男性は綺麗な日本語を喋ってはいるが、碧眼で彫りの深い顔、髪は艶感溢れるプラチナブロンドで、身長も高くスタイル抜群。俳優だとかモデルと言われても納得するほどのイケメンだ。

 着ているスーツも恐らくはオーダーものの高級品。体にピッタリ合っているから様になる。


 対応したのは水琴で、日本語で訊いてきたのに英語で対応を始めたら、日本育ちだから気を遣わなくて良いと言われていた。


 何でも父親はイタリア人、母親が日本人で、幼少期はこちらで育ち、今は彼の地で暮らしていて、職業は機械類の貿易業を祖父の代から経営しているとのこと。父親の兄弟が何人もいて、それぞれアメリカやドイツなどで現地法人の社長をしていたのだそうだ。

 祖父が引退し、日本法人の社長をしていた自分の父親が本社を継ぎ、自分は本国で片腕として仕事をしながら、ここ暫くは日本法人と共同で次の取引品目を探しているとのこと。それが決まるまでは本国に帰らないという話だ。


 できれば現地で試用してみて、代理店契約を結びたいと言ってきた。


 笑顔がとても素敵で、ウチのスタッフでも何でもないのに、女性が見惚れながら通り過ぎていく。

 俺にもそう言う反応しろよ!と毒づきたくなる。


 詳細は後日ウチの会社で詰めることとして、今回は鈴華達の説明とデモを見て貰った。

 相変わらず凄い人だかりで、会場警備の人が一人専属で付くほどになっている。

 お茶汲みのデモを始めると歓声が上がる。


 先ほどのハーフ男性も目を丸くして、その動作に見入っている。


「いかがですか?」

「想像以上に凄い。これイタリアへ持ってったら絶対に売れるね」

「最新の制御技術が入っていますからとても滑らかな動作をします」

「うん、わかる。彼女に変えて僕のオフィスに欲しいね。あの人怖いから」


 付き添いの女性はネイティブイタリアンなのだろう。白人特有の凄いフェロモンを出している。

 この人もモデルと言ったら全員信用するくらいのルックスだ。


 自分達のブースには間地代理や水琴までいるのだから、まるでモデルのプロダクションだ。

 もはや警備員でもオタオタするくらいの人だかりで、広報効果は抜群。

 これで昨日派手に怒られたのを帳消しにしてくれれば良いのだが。


 大成功かどうかは別として大盛況で展示会が終わった。


 終わった・・・・・・




 展示会という嵐のような時間が過ぎて、今は始末書を書かされている。

 開発二課では絶対に書いたことの無いものだ。


『鈴華のプログラムに欠陥があったことを深く反省し、今後その様な製品を作ることがないよう努力します』


 まあ、この位なら仕方がないか。

 これ以上責められたら転職も考えないといけないと思っていたから、落とし所はこんなものだろう。


 下半身も瘡蓋かさぶた状になり、朝の痛みもなくなった。

 もちろん、はまだできないが。

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