神話の世界に最強神で転生したんだが。
しのののめ
第1話 転生
秘密といっても、別にバレたところで何ともないのだが、普通の男子高校生には、どうしても、周りに知られたくないことの一つや二つあるものだろう。
例えば、皆の前では陽キャぶっているのに家ではガッチガチのヲタクだったり、大好きなあの子のSNSを頻繁に見ているとか。そんな、周りからしたらどうってこと無い事を男子高校生は気にしてしまう、新野創も、その一人だ。
昔から、神話に興味があり、世界各地に伝わる神話を読み漁って、網羅しているのだ、みんなのクラスにも一人は居たのではないだろうか、他の教科は出来ないのに、歴史にだけめちゃくちゃ詳しい人。あれの神話バージョンがこの男なのだ。
「あの、すみません」
いつも通り、図書館で本を読んでいると、急に話しかけられる。
身長は低く、髪は綺麗な茶髪で、後ろで結びポニーテールにしていて、目も透き通るような綺麗な瞳に、くっきりとした二重の非常に顔の整った女の子だ、きっと、学校の中でも1、2、を争うレベルの美少女だ。胸元のクラス章で1年生だと分かった。
しかし、こんなに、可愛い子が、なぜ、こんな、冴えない俺に話しかけてきたのだろうか。まさか、モテ期というやつだろうか。それなら嬉―――
「あの!聞いてますか」
「あ、はい、どうしましたか」
「あの、先輩、ちょっと、言いずらいんですけど、」
もじもじし始める、恥ずかしいのだろう、女の子は耳まで真っ赤だ。
おいおい、まてまて、この展開、確定演出じゃないか、キタコレ。
生まれてこの方、一度も女子に好かれたこともなく、告白なんて、夢のまた夢だったのに。
夢が叶うではないか、単純に今が一番幸せだ。
「先輩、ストーカーするの本当にやめてください」
「え」
数秒経って、彼女から発せられた言葉に思わず、本気の困惑を見せる。
何のことだ、ストーカー?そんなことはしていない、確かに、俺は根暗で、陰キャで、そういうことしてそうに見えるかもしれないが、そんな事実は一切ない。
「あの、人違いでは?そんなことしてませんよ、貴方のこと見るのも今日が初めてですし」
「いい加減にしてください!本当に辛いんです!次そういう行為をしたら、け、警察に言いますから!」
「ちょっと待って、ほんとに違っ——――」
最後まで俺の話を聞かずに行ってしまった、本当に訳が分からない。
警察だと?ふざけんな、冤罪で捕まりたくなんかねーよ。しかし、陰キャの道をずっと進んできた俺にはアリバイを証明できるような友達だっていないし、一人暮らしだから、家族だって俺の証明は出来っこない。
普通に詰んでる。こんなのは出来レースじゃないか。
天国から、地獄に落とされたのだ、どうしてくれようか、このイラつきは、ムカつく。
次会ったら、呪ってやる、いくら可愛いからって、調子に乗るなよ。と、言ってやりたいものだ。
「ん?なんだこれ」
ふと本を見るとさっきまで見てたページと変わっている。
いつも読んでいる神話の本に見慣れない記述を見つける。
「呪い?対象をこの世から消す呪い」
神話の本なのに、呪いの説明しかないし、どの神話からの出典かも記載されておらず、他のページとはフォントが違った。それどころか手書きのようだった。
「なんだ、ただのいたずら書きか、ちょうどいいや、今度会ったら、これで呪ってやろっと」
——―――――――――
案外直ぐその時は来た、図書館を出て、昇降口に向かっていると、あいつは、寂しげに外を眺めていた。
ケッ、こんなに早く見つかってしまうとは。いいさ、すぐにでも実行してやりたいと思っていたからな。どうせ何も起きやしないが。
「あの、さっき、冤罪かけられたものなんですが~」
嫌味まで言う余裕が俺にはあった、テンションが高かったからだ。
すかさず、呪いの実行に移る。なんだっけ、なんて唱えるんだっけ。
思い出しながら、呪文を唱える。
「アカロウシーズ ミ シーモウ ヒメイオピオディナトス アス セカノウメ スケアヴモウ」
我ながら、中々勇気があったと思う、言い終わって気付くが、これで、ストーカーでなくてもやばい人間だし、捕まりかねない。
あーあ、終わった。俺の人生終了のお知らせだ。なんも起きやしないし。このまま変態の汚名を着せられて最悪ムショ送り、こんな事なら、朝、食べるか食べないか迷ったプリンを食べておくんだった。
絶望していると、さっきまで唖然としていた彼女が光りだす。
あれ、もしかして、なんか、呪えたかも、さようなら、今日会ったばかりのクズ女よ。俺の勝ちだ!
「な、なにこれ、何したの?おかしい、熱い、ねぇ、助けてお願い。」
「それは、無理なお願いだ、俺も、止め方知らないもん」
「酷い、ヤダヤダヤダ、お願い誰か助けて―!!」
次の瞬間、この世界から、彼女は消えた、しかし
俺も消えた。
神話の世界に最強神で転生したんだが。 しのののめ @Rainn_
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